商標ブローカー撃退のコト

以前、書いた『商標ブローカー潰し、承ります』の記事に御連絡を頂いて、ある商標ブローカー被害の被害者の方の御手伝いをさせて頂いておりました。

このたび、相手方の請求放棄という形で商標ブローカー被害を回避することができましたので、晴れて記事にしたいと思います。

今回、被害者の方はこのブログに御相談を頂く段階において既に訴訟を提起されて被告となっていました。
裁判には弁護士先生による「訴訟代理人」の他、「補佐人」という制度があります。これは原告や被告本人が法廷にきて訴訟をする際、それを補佐する形で第三者が同席して訴訟に対応する制度なんですが、知財訴訟の場合には弁理士が補佐人となり、原告若しくは被告本人と弁理士のみで弁護士抜きで訴訟対応をすることもあります。弁理士補佐人付き本人訴訟、みたいに言われます。
被害者の方には、「裁判で負けるよりもお金がかかってもいいから、ちゃんと戦いたい」という強い意志がありました。
訴訟の戦略は自分でも立っていたのですが、細かい戦術についてはやはり弁護士先生の御力を借りたいトコロ。なので、私としては信頼する弁護士先生の訴訟戦術を勉強させて頂くつもりで、「弁護士の方の費用だけ出してください」ということで対応することにしました。

訴訟の戦略の大枠については以下の通りです。
①「その商標権は無効だ!」ということを主張する。
商標の審査は、時としてかなりザルな場合があります。
・商標登録出願の出願時点において既に一般的に使われていて、商標登録されるはずのない言葉だった。
・商品の内容やサービスの内容を表現しただけの言葉だった
・商標登録出願の出願時点において、出願人以外(商標ブローカー被害においては、主に被害者)のサービス名として既に有名になっていた。
といった理由で、商標登録は無効になります。
②「お前自分で商売してねぇし、するつもりもねぇだろ?」ということを主張する
商標登録は3条1項柱書により、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標について」認められるものです。商標ブローカーの大半はこの要件で潰せます。ただし、商標ブローカー側は「現在準備中だ」「ウェブサイトを出して依頼を募集している」等の反論をしてきますので、その辺は相手の現状を分析して戦術を立てる必要があります。
また、この項目は「権利の濫用だ!」という主張にも繋がります。
③「商品やサービスの内容を普通に示してるだけだ!」ということを主張する。
①の2番目の理由にも関連しますが、商標権は、商品の内容やサービスの内容を説明するための言葉や文章には及びません。商標ブローカーが狙う言葉には、一般的な言葉を組み合わせただけの説明的な言葉も多いので、この主張も割と効果的です。
④「いや、お前が登録する前からこっちは使ってて、結構有名だったし」ということを主張する。
①の最後の理由にも関連しますが、自分が商売で商標として使っている言葉が、誰かの商標登録出願によって登録になったとしても、その出願の時既に商品やサービスを展開していて、ある程度の知名度を獲得していれば、引き続き使用できることになっています。

こちらに弁護士、弁理士が付いた段階で相手方は請求額を減額してきて、「払った方が安く終わる」という形に持ち込んできました。そんな相手方の対応にウンザリしたというのが正直なところですが、それでも被告の方の強い意志の元で訴訟を継続した次第です。

大枠の戦略に沿って弁護士先生が戦術を組み立て、淡々と対応した結果、「請求放棄」という形で、相手方には一切お金を払うことなく訴訟が終了し、私は商標ブローカー対策の訴訟戦術の実際を目の当たりにして勉強することができました。

が、

当然、被告の方は弁護士費用を払いました。結果的にはマイナスです。
マイナスになってでも戦いたかったと言うのが元々の意志ですが、その上で我々としては、「その権利は無効だ!」とか、「その権利行使は無効だ!」みたいな明確な判決を獲得して、被告の方が支払う金額に対してなんらかのリターンを作りたかったのです。
訴訟が進む中で形勢不利となった相手方は提訴の「取り下げ」を言い出すのですが、これは被告側が同意しなければ成立しません。当然に取り下げには同意しませんでしたが、それならばと放棄されてしまいました。

今回の訴訟の中で判明したことなのですが、この商標権者は同一の商標権に基づいて色々な相手に訴訟を提起しており、他の訴訟においては何件か和解金を獲得しています。和解金を獲得していること自体許せないことなのですが、特に酷いと思うのは、今回の訴訟で被告の方が支払われた代理人費用よりも安い額を複数の相手方からつまんでいるということです。これはもうヤクザのやり方ですよね。

知的財産制度を捻じ曲げる商標ブローカーは絶対に許せない存在です。
「そんな制度なのが悪い!」というのはもっともな意見なのですが、制度を運用するためにはどうしても費用がかかります。その費用がすべて税金でまかなわれれば言うことないのですが、知的財産のような、一部の人のみが恩恵を受ける制度に関しては、全てを税金でまかなうのではなく、恩恵を受ける人が費用を負担するべしというのが妥当なところだと思います。
そんな費用の隙間を突いてズル賢く小銭をつまむのが商標ブローカーのやり方です。
「その値段なら、費用をかけて正当な手続きを踏むよりも、払っちゃった方がいいや」と思わせる、そんな誠実さの欠片もない行為により金儲けをする輩は許せないと私は思います。
今後も、商標ブローカー対策を続けていきたいと思います。

お困りの方、まずは御相談を!

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