「キャラクター版権」に対する違和感

先日、2/19(日)に東京ビッグサイトにてワンダーフェスティバル、通称ワンフェスが開催されまして、閉会までたっぷりとはいきませんでしたが楽しんできました。

ワンフェスとは?

コミケが同人誌等の紙媒体、平面的なモノを中心とした即売会イベントであるのに対して、ワンフェスはガレージキット、フィギュア等の立体物を中心とした即売会イベントです。

立体物という事で、同人誌以上に著作権に関する懸念が生まれるところですが、ワンフェスは「当日版権システム」という許諾システムによってその懸念点をクリアしています。

当日版権システムとそのメリット

当日版権システムの詳細についてはリンク先参照ですが、つまりは「ワンフェス当日だけなら売ってもおk」という許諾制度です。

許諾を受ける側にとっては権利をクリアにしてイベント当日を楽しめるというメリットがあり、許諾を出す側にとってはファンの活動を活発化させつつも、当日という制限によって無制限な作品利用にはならないため許諾を出しやすいというメリットがあります。

 

で、自分は今回のワンフェスにて、大好きな魔神英雄伝ワタルの魔神「真夏鬼丸」を購入しました。アイキャッチ画像がその箱です。

この魔神、放送当時には立体化されなかったという不遇な魔神。かっこいいのにもったいない。

箱には当日版権を許諾した権利元の表記があります。
Ⓒサンライズ・R という部分です。

『魔神英雄伝ワタル』シリーズの権利表記と同じですね。

実は私はこの権利表記に対してちょっとした疑問を持っています。
ワタルシリーズに対して、という事ではなく、アニメの権利表記とそのキャラクター版権の権利表記とが同一で当然という慣習に対してです。

※なお、「版権」という表現は条文上の表現とは用法が異なるもので、私は仕事上では使わないようにしていますが、世間一般でキャラクターの著作権の事を論ずる際に広く使用されている表現なので今回の記事ではそのまま使います。

アニメの著作権について

アニメの著作権、多くの場合には製作委員会が保有することになる権利ですが、ここでは「アニメ製作者の権利」としましょう。
その権利は、、、

「作品に関する一切の権利」ではありません。

アニメ製作者が「当然に」取得する権利は、あくまでもアニメ作品として完成した「映像」の著作権です。

これに対して、作品内に登場するキャラクターや、登場するロボット、その他の「デザイン」に関しての権利は、アニメ製作者が「当然に」取得する権利ではありません。

なので、アニメ製作者が「当然に」取得する著作権に基づいて差し止め請求や損害賠償請求等の権利行使をしたり、他社に使用を許諾したりすることができるのは、あくまでも映像作品の使用に関してです。

デザインの著作権の権利者

では、アニメ製作者がデザインについての権利まで取得する場合にはどのような場合があるか。
大きく分けて2つ

(1)デザイナーがアニメ製作者(若しくは製作委員会の一員である会社)の従業員であり、その業務としてデザインを行った場合。
従業員が職務として著作物を制作した場合、その著作物は「職務著作物」として著作者は雇用主である会社となり、一切の権利は会社に帰属することになります。なので、デザイナーがアニメ製作者に雇用されていて、会社の業務としてデザインを行ったのであれば、そのデザインの権利はアニメ製作者である会社が著作権を取得することとなります。
ただし、アニメ業界には従業員なのか個人事業主なのかよくわからない状態も少なくありません。そのような場合には、個別具体的な実情が考慮されるでしょう。
つまり、年金や保険の手当をしておらず「個人事業主」という体裁でやっているのであれば、それに従って「職務著作物」は認められないことになると思われます。ある時は「個人事業主」、ある時は「従業員」なんていう都合のいい事は許されないですよね。

(2)デザイナーとアニメ製作者との間に著作権の譲渡契約が成立している場合。
上記の「職務著作物」でなければ、デザインの著作権は基本的にはキャラクターデザイナーが取得することになります。そのようにして権利を取得したデザイナーとアニメ製作者との間に著作権の譲渡契約が成立していれば、アニメ製作者がデザインの著作権を保有することになります。これは普通の話ですね。

というわけで、この2つのどちらでもない場合、デザインの著作権はデザインをしたアニメーターさん、若しくはそのアニメーターさんを雇用している会社に帰属することになります。

つまり、アニメ作品として完成した映像の著作権と、作品中に登場するキャラクターやメカ等のデザインの著作権とが別々に保有されることになるわけです。

この状態について判断されたアニメ業界ではとても有名な判例があります。私も非常に関心高く読み返している「マクロス事件」。

マクロス事件判決

マクロス第一作目『超時空要塞マクロス』の製作の経緯等の詳細や、事件の概要はWikipediaを見れば解説されていますが、簡単に書くと、

・マクロスシリーズ一作目、『超時空要塞マクロス』はスタジオぬえ、ビッグウェストが企画してスタートした。

・『超時空要塞マクロス』の製作(テレビ放送に際しての進行管理等)はタツノコプロが担当した。

・それ以降の続編作品では、タツノコプロはマクロスシリーズに製作として関わっていない。

・『超時空要塞マクロス』の著作権を主張してタツノコプロが提訴、タツノコプロが著作権法上の「映画製作者」として、著作権を有することが確認される。

・他方、アニメ作品としての著作権は映画製作者に帰属するが、そこに登場するデザインの著作権まで自動的に譲渡されるわけではないとして、キャラクターデザインやメカデザイン等の著作権はタツノコプロには無いとされる。
(※ちなみに、「マクロス」というシリーズ名について、第一作目の著作権者たるタツノコプロが不正競争防止法の商品等表示を主張したが、タツノコプロの商品等表示として周知性を獲得しているわけではないとして却下。)

どうでしょう、簡単に言うと、製作委員会が「当然に」キャラクターやメカ等のデザインについて著作権を獲得するわけではないということです。

そりゃそうですよね。

原作、原案があると更に複雑化

漫画やラノベ等の原作があったり、キャラクターデザインとは別にキャラクター原案の方がいると話はもっと複雑化しますし、デザインの内容やデザインに際しての作業の内容に応じて個別具体的な判断が必要になってきます。

最も単純に考えると、原作者やキャラクター原案の方が一次的な著作者、著作権者となり、アニメのキャラクターデザインの方は二次的著作物の著作権者という事になります。

しかしながら画一的に言える事でもなく、デザインにおける実際の作業内容に応じて色々と事情は変わり複雑化するでしょう。

魔神英雄伝ワタルシリーズに関してのこと

では、魔神英雄伝ワタルについて考えてみます。

ワタルシリーズのキャラクターデザインは、言わずと知れた芦田豊雄さんを筆頭としたスタジオ・ライブのクリエイターの皆様です。広井王子さんも原案的に関わっているのかもしれません。

また、龍神丸をはじめとした魔神のデザインは、当時レッドカンパニー社に所属されていた中沢数宣さんという方。

なので、魔神のデザインについての著作権は中沢数宜さん個人、若しくは職務著作物としてレッドカンパニー社が一次的に取得することになるかと思います。

その上でサンライズ社との間で著作権譲渡に関する契約や合意があれば、ワタルのキャラクターや魔神を使用したグッズについての著作権許諾もサンライズ社が行う事になりますが、それがないのであれば魔神のガレージキット等の著作権表記は

ⓒ中沢数宜、若しくはⒸレッドカンパニー(※現在はレッド・エンタテインメント)という事になるのではないかと。

利便性の点ではアニメ製作者による一括管理にメリットあり

では、アニメ製作者が映像そのものの権利だけでなくキャラクター版権も含めて一括して管理している現状が間違っているかといえばそうでもありません。

アニメ製作者による一括管理が行われているからこそ、ワンフェスのような当日版権の処理もスムーズに行う事が出来ます。
これが、「キャラクターや魔神のデザインに関しての版権許諾はデザイナーの方に言って」となれば、デザイナーさんが誰かを探すところから始めなくてはならなくなり、許諾を求める方も及び腰になってキャラクター活用の機会が減ってしまうことが予想されます。

他方、キャラクターが活用されて経済的な利益を生んでいるのに対し、法律的には著作権を主張できる可能性のある人に経済的なリターンが発生していないのもまた考え物です。

商売にはリスクがつきものですから、クリエイターの権利を主張するばかりではキャラクター活用に関してマイナスになってしまいます。
かと言って、クリエイターの権利が蔑ろにされては、クリエイティブが先細っていくばかり。

全てはバランス

キャラクタービジネスの弊害になることなく、キャラクター活用の利便性とクリエイターへのインセンティブとのバランスを最適化するように我が社虎夢は頑張っていきたいですね。

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