「松崎しげる」フィギュアを「ジェームス・ブラウン」と勘違いして大喜びする光景に知的財産の本質を見た

(※おことわり)
本件記事は、「松崎しげる」のフィギュアを「ジェームス・ブラウン」と勘違いして大喜びしていた外国人観光客をテレビで見た際に、フリーライド、パロディといった知的財産の問題の本質につながる要素を見出して書いたものです。
読んで下さる場合には、松崎しげる氏やそのフィギュアの販売に対してまったくの他意が無いことを御理解頂いた上でお願い致します。

 

松崎しげるフィギュアがガチャガチャで発売されているそうです。

ガチャガチャ売り場にはわりと頻繁に足を運ぶのですが、売ってるのを見たことがあるようなないような。

とある番組で、「今、成田空港ではガチャガチャが大人気!」という内容を放送していました。
そのなかで、海外からの観光客の方が

「ジェームス・ブラウンは自分にとって神様なんだ」

と大喜びで松崎しげるフィギュアを手にしていました。

そのフィギュアがジェームス・ブラウンのフィギュアではない事に気付かないまま、幸せな気持ちを持ち続けたまま、その方が生涯を全うすることを願うばかりです。

さておき、

この話は「知的財産」というものを考える上で非常に良い題材だと思いました。

「有名人の姿形」は知的財産の中でも「パブリシティ権」に関するので、とりあえずはパブリシティ権の話をします。

「パブリシティ権」とは、

有名人が発揮する「顧客吸引力」、「注目される力」を保護する権利で、「パブリシティ権」という権利が規定された「パブリシティ権法」という法律があるわけではありませんが、判例上認められています。

色々と議論や要件がありますが、有名人の著名度が勝手に利用されて商品が販売される場合に、その有名人がその商品の販売を差し止めたり損害賠償を請求したりできます。

では、松崎しげるフィギュアがジェームス・ブラウンに見えてしまう問題について考えてみましょう。

まず、当然のことながら松崎しげるさん本人との間ではなんらかの契約がある事が想像されます。
なので、松崎しげるさんのパブリシティ権はクリアという前提でのオハナシ。

検討対象となる「事実」は、このフィギュアを「ジェームス・ブラウン」のフィギュアと勘違いして購入した人がいる、という事です。

このフィギュアはあくまでも「松崎しげる」フィギュアであって、「ジェームス・ブラウン」フィギュアではないし、販売に関しても「ジェームス・ブラウン」をにおわせるようなことは無さそうです。

フィギュアそのものの形態や、販売形態に関して客観的にわかる事実から、「ジェームス・ブラウン」のパブリシティ権に抵触するような要素は見えてきません。

ですが、

企画側の内心に「ジェームス・ブラウンと勘違いして売れるといいな」という意図があったとしたらどうでしょう?
あくまでも松崎しげるさんの容貌をフィギュアとして立体化しつつも、元から多少似たところのある松崎しげるさんとジェームス・ブラウン、その意図があってもおかしくありません。

そして、表立ってわかる形で「ジェームス・ブラウン」感を出すようなことはしなかったとしても、フィギュアの造形として、松崎しげるさんから「ジェームス・ブラウン」に寄った(ように見える)造形だったらどうでしょう?

それでも、「ジェームズ・ブラウンだ!欲しい!」と勘違いする人がごく少数であれば、やはりパブリシティ権の問題にはならないと思いますが、この辺からグレーゾーンに入りだします。

ではでは、「松崎しげるフィギュアだ!欲しい!」と思う人の人数よりも、「ジェームズ・ブラウンに似てる!欲しい!」と思う人の方が多かったらどうでしょう?
だいぶ怪しくなってきました。

既に故人ではありますが存命だったとして、「ジェームズ・ブラウン」のコンサートでばかり売られていたらどうでしょう?
かなり怪しく感じます。

パブリシティ権を認めた場合の弊害

仮に、「ジェームス・ブラウン」のパブリシティ権が認められるとします。
※故人のパブリシティ権が認められるかについては議論がありますが、今回は認められる前提で。

そうすると、「ジェームス・ブラウン」側としては、

「松崎しげる」と言いながらも「ジェームス・ブラウン」の知名度を利用して商品を売っていたのだから当然の結果。
主張が認められて一安心だ。

となりますが、「松崎しげる」側としては、

なんで「松崎しげる」の認可を受けた公式のフィギュアを売っていただけなので、容貌が似ているからと言って「ジェームス・ブラウン」から差し止められなければいけないんだ!

となるでしょう。
内心として「似せてやろう」という意思があったのであれば、納得もできるかもしれません。
しかし、そういった気持ちが微塵もないのであれば「松崎しげる」側にとっては寝耳に水、到底納得できる話ではないでしょう。
「良いもの、面白いものを作ろうと頑張っただけなのに!」となります。

そして、「似せてやろう」という意思があった場合もなかった場合も、商品の形態としては全く同一になる可能性がある、客観的に判断できる要素はどちらの場合も全く同一なのです。

似せる意思が判断に影響することの是非

人の心の中は覗けません。
が、仮に覗けたとして、「似せてやろう」という意思があればパブリシティ権の侵害、その意思がなければ非侵害、という判断でいいのでしょうか?

単純に、「やっていいこと」「やっちゃダメな事」を規定して、客観的な事実のみに基づいて判断していけないのでしょうか?

仮にそうすると、「似せてやろう」という意思がまったくなく、偶然似てしまった場合も「権利侵害」という事になってしまいます。その結果、クリエイティブな創作活動が抑制されてしまうというデメリットが発生します。

対して、「似せてやろう」という意思があった場合にのみパブリシティ権の侵害とする場合には、
上記のジェームス・ブラウンの話で置き換えると、仮に買う側の半数以上が「ジェームス・ブラウンだ!」と思って買っていったとしても、ジェームス・ブラウンには一銭も還元されないという事になります。

著作権法では「依拠性」必須、だが、、、?

著作権法の場合、「似ているかどうか」を示す「類似性」に加えて、「知ってて真似したかどうか」を示す「依拠性」が考慮されることにより、「偶然似てしまった」という場合には権利侵害にはならない事になっています。

そのため、裁判においては「似てるかどうか」に加え、その他の様々な傍証により「知ってた」「真似した」という事が主張立証されます。

が、「こんだけ似てたら知らなかったわけがない」という形で、「似てるかどうか」だけで判断される場合もあります、というかその場合の方が多い気がします。
結局のところ、侵害か否かの判断は「似てるかどうか」「偶然にここまで一緒のわけない」ということで判断されています。
ソフトウエア著作物に関しての裁判ではその傾向が特に顕著ですね。

これって結局、依拠性の要件が必要なのか?という疑問が沸きます。
単純に権利侵害を認めるための要件として、「似てる」と判断するハードルが高いだけの気もしてきます。

商売のやり方も含めて判断する事?

話を元に戻すと、
「松崎しげる」フィギュアをデフォルメして作った場合に「ジェームス・ブラウン」に似てしまうことはあるでしょう。
それが意図的に似せたのか、それとも偶然似てしまったのか、それは作った人にしかわからないし、場合によってもは作った人も自覚していないうちに似せてる場合だってあります。
創作ってそういうものです。

とすると、これは「作ったものが似てるかどうか」よりも、商売のやり方も含めて判断することなのかなとも思います。

つまり、

造形を「松崎しげる」から「ジェームス・ブラウン」に寄せてるような感じで、且つ
「ジェームス・ブラウン」のコンサート、故人なのでコンサートは無いにしてもカバーのライブやトリビュートのイベント等、「ジェームス・ブラウン」関連の場で積極的に販売していくようなやり方をしている場合、

そんな場合には、パブリシティ権の問題が浮上してくるという。

ただし!

それでも「松崎しげる」をデフォルメしたフィギュアを「松崎しげるフィギュア」としてご本人の許可の上で売ることのどこかが悪いのか!
という単純な問題はあります。
それに仮定の話ですが、「松崎しげる」フィギュアを「ジェームス・ブラウン」関連のイベントとかで売ってるのって、面白いですよね。

これを禁止することは「ジェームス・ブラウン」の権利、場合によっては尊厳を守る上で必要と判断される場合もあるでしょう、
反面、「この場でこんなん売ってる!面白い!」という笑いが生まれる可能性を潰すことにつながります。

これはもう、「どちらが正しい」という事ではなく「フリーライド」「パロディ」というものに対して「どう考えるか?」「国としてどちらに舵を切るか?」という問題、おそらく国によって司法の判断が割れる問題かと。

日本では基本的にパロディ等に対して厳しい判断が司法の場では下されているような気がします。

これに対して、以前当ブログでも記事を書きましたが、(あくまでも商標登録の是非の判断では)「フランク三浦(右上の点なし)」の商標が、「乗っかってるのは事実だけど区別はできる」として有効だと判断され、パロディ商標は許可される方向に動いています。
フランク三浦(右上の点なし)の件については、FRANCK MULLER側が本気なら不正競争防止法の裁判が今後起こるのではないかと。

日本の司法が「パロディ」というものにどういう判断をしていくのか、これからも目が離せません。

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