知的財産に関する「使用許諾契約」の罠

「法律と実務は違う」という言葉を時折耳にします。
が、「いくら何でも違い過ぎる」と思うのに、大多数の人が大きな疑問や危機感を抱かずにサラリと流してしまっていると感じる事について少々。

使用許諾契約

アニメや漫画のキャラクターを商品やプロモーションに使用させてもらうための契約、ここでは「キャラクター使用許諾契約」と呼びましょう。
そんなキャラクター使用許諾契約をはじめとする、知的財産に関する「使用許諾契約」について

この契約、普通に考えれば、
・許諾を出す側は知的財産(キャラクター)を使用してもらって収入を得られるメリット、
・許諾を受ける側は知的財産(キャラクター)を使用できるメリット、
という、双方にメリットがあるはずの契約です。

が、

契約書を見たところ、「許諾を受ける側には実はデメリットの方が大きいのでは?」
と思う場合があります。

その理由は、契約書の記載により「許諾されている事」や「禁止されている事」について、

法律による根拠が不明確であったり、
明らかに根拠が無かったりするから、

です。

契約は原則として法律に優先します。

なので、法律的に根拠が無いことも契約を結んでしまえば効力を持ってしまう。
その結果、客観的に見れば「こんな契約結ばない方がいいんじゃない?」と思う契約もあるようなないような。

では具体的にどんな場合があるのか。

根拠の無い禁止条項がある場合

契約書には、
・「~を許諾する」
・「~は禁止する」
みたいに、やっていいこと/ダメなことが記載される場合があります。

許諾契約なので「やっていい事」を記載すれば基本的には十分なのですが、例外的に禁止したいことを明確化するために記載されたりします。

キャラクター使用許諾の場合だと、簡単な例としては
・立体物として商品化することを許諾する
・性的表現、その他キャラクターのイメージを損なう立体物としての商品化を禁止する
みたいな感じでしょうか。

このような条項の場合、前者の「立体物としての商品化の許諾」について正当な権利を持っている事が前提であれば、「その中でも18禁系は禁止」っていうのは十分に根拠がある事です。

対して、

・立体物として商品化することを許諾する
・立体物以外に対するキャラクターイメージの使用を禁止する

という条項だとどうでしょう。
一見、「許諾されるのは立体物だけなんだな」という感じですが、「キャラクターイメージ」というのが曖昧なのがミソ。

「キャラクターイメージ」って何でしょう。
「キャラクターの肖像」、「キャラクターの姿形」でしょうか?
それとも、
「赤がトレードマーク」、「3倍速い」みたいな設定上のイメージでしょうか?
ご想像の通り、後者を権利として守るのはそう簡単な事ではありません。

しかしながら、【立体物以外に対するキャラクターイメージの使用を禁止する】という条項を含む契約が成立すれば、法律的な根拠がどうであれば、それを破れば契約違反。紛争の火種になってしまう可能性があります。

少なくとも、許諾をした側が「これは契約違反だ!」と言い出す可能性は十分に考えられるでしょう。
これに対し、許諾を受けた側は「そんな権利がオタクにあるのか!?」と言ったところで後の祭り、
「いやいや、契約書に書いてあんじゃん」
という感じで応酬が始まってしまいます。

 

以前のブログで書いたような言い過ぎ知財も、この「根拠のない禁止事項や、根拠のない許諾事項」の一例です。

 

そもそも権利者ではない

前回の記事にて書きましたが、当然の立場として許諾を出している権利者が本当に権利者なのか怪しい場合があります。

これは、権利者と名乗る側が「自分に権利が無い事」を理解して相手を騙そうとしている場合は稀で、「自分に当然に権利があると思い込んでいる」場合の方が多い、それが厄介です。
そして、実情としてそういった局面が少なく無い、それくらい知財の権利というのは一筋縄ではいかないものということです。

では具体的にどんな問題が生じるか?

実際、
自分に権利があると勘違いした状態で許諾を出す側、
相手に権利があると信じて許諾を受ける側、
その他の関係者、
全員が勘違いをした状態のままなら問題にはなりません。

本来は権利を持っていない人が権利による収入を得る、そして本来は権利を持っている人が権利による収入を得られない、という間違った状態に目をつぶるのであれば、大きな問題にはならないでしょう。

これに対して、本来の権利者が声を上げたらどうなるでしょう?

結論は契約書の記述や契約者間の状況によって様々ですが、あまり愉快な結果は見えません。

許諾者を正当な権利者と信じて契約を結んだ上で知財を使用した側に責任はあるのか?
自らを正当な権利者と信じて許諾をした偽権利者は誰に対して責任を負うのか?
既に支払われた対価の行方は?
新たな許諾契約を結ぶことは(気持ち的に)できるのか?

面倒な事をたくさん考えなければいけなくなってしまいます。

契約を結ぶなら

使っていい、使っちゃダメ、そういった単純な事を約束するだけなら、面倒な契約書を交わす必要性は無いとは言わないまでも薄いですね。

そういった単純な契約書が意味を持つのは、
「使っていい」って一度は言った相手が後から「やっぱりだめ」と言い出す場合。
そんな事を言い出す相手とはそもそも契約なんてしない方がいいわけですが。

契約書の真価は不慮の事態への対応、
今回の論点の場合であればどのような点に注意して契約書を見るべきか?

その辺が契約書チェックの仕事の醍醐味ですかね。

 

 

記事の拡散Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です