長らく放送されることなく完全に放置されているヲタ弁事務所ですが、引き続き放送できるような目途は立っていません。
が、年度末の繁忙期を抜けたところでニコニコでの何らかの活動をしたいという欲求の元、ブログなんかを書いてみようと思った次第です。
ヲタ弁事務所のブログとして知財関連のブログとして細く長く続けていきたいと思います。
で、第1回目のテーマは「ブランド」について。
過去の放送にて、日本のコンバースは偽物だ!なんて放送をやりましたが、そんな感じの話です。
そもそもブランドって何でしょう?
~株式会社、みたいな屋号の場合もあるだろうし、ある会社によって展開されているシリーズやサービスの名称の場合もあると思います。
今回語りたいのは後者、つまり、とある会社によって展開されているシリーズやサービスの名称についてです。
例えば車の名前、日産の「スカイライン」みたいな感じです。
例えば「ニコニコ生放送」もそうですね。
これは、会社の名前ではなく、株式会社ニワンゴが運営しているウェブサービスの名称です。
元は「ニコニコ動画」から始まったニコニコシリーズですが、今や「ニコニコ」という一大ブランドとなっているのではないでしょうか。
さて、こんな感じでブランドが世間に認知されてくると、様々な関連商品が発売され、お金集めが始まります。
例えば20年ほど前、Jリーグ発足当時の「Jリーグ~」という乱発っぷりはひどいものでした。
そんな関連商品の乱発は「ブランド力の浪費」という表現が当てはまると思います。
そんな「ブランド力の浪費」についてのオハナシ。
私は10年ほど前、弁理士になる前に、とある会社Tで、とあるブランドQのマーケティングを担当していました。担当していたといっても主担当だったわけではなく、新卒として入社して主担当の先輩のアシスタントをやっていたという感じです。
「この会社で弁理士として知財の仕事がしたい!」
といって会社に入ったのにマーケティングとかふざけんなよ、って感じだったんですが、ブランドの管理とか他社の商品イメージの使用許諾の管理とか、色々と学ぶところの多い仕事でした。
ブランドQのチームには、長いことブランドQの開発に携わっている匠がいました。
この匠をNさんとしておきましょう。
子供のころから知っていたブランドQですが、
「あぁ、この人が作るからブランドQの商品なんだなぁ」
と感じたものでした。
会社には多くの人がいて多くの部署があって多くの仕事があります。
ブランドQは会社Tを代表する商品シリーズの1つですが、会社Tの社員が全員ブランドQに携わっているわけではなく、ブランドQ担当のチームがブランドQの商品展開を担当しています。
が、限られたメンバーでの商品展開、マーケティングには限界があるので、少ないチームメンバーだけでブランド力を活かしきった展開が出来るかというとそうではありません。
メインとなる商品展開の他に、そのブランドQの名が付いた関連商品の展開を行う担当者が会社内、時にはグループ会社の様々な部署に存在するわけです。
つまり、ある程度の規模のブランドになると、
・メインとなる商品展開を行う担当者(メインチーム)
・周辺商品の展開を行う担当者(周辺チーム)
という住み分けがされてくるわけですね。
夫々の担当者が同じ部署にいるのか、別々の部署、時には別の会社にいるのかは、会社やブランドによって違うと思いますが、会社TのブランドQでは別々の部署、別々の会社でした。
で、
夫々の商品展開を行う担当者は自分の実績を上げなければいけませんから、色々なアイデアで商品展開を考えます。
かたや、メインの展開を行うチームは、メインの商品展開はもちろん、ブランドQ全体のブランドイメージ、戦略を考えていかなければなりません。
そうすると、
関連商品の担当者のアイデアとメイン商品のアイデアとが被ったり、
関連商品の担当者のアイデアがメインチームの考えるブランドイメージに反したり、
するわけです。
当時、会社TのブランドQは、ブランドイメージに基づいた全体のイメージ戦略がグダグダで、色んな部署が好き勝手なことをやっているような状況に陥っていました。
例えば、「ブランドQ」というロゴ、つまり商標が付いているだけでブランドイメージにまったく沿っていない商品が平気で発売されたりしていました。
つまり、私がブランドQであることの意味、意義として感じた匠Nさんとは関係ないところで、勝手にブランドQの商品が作られていたのです。
つまり、「ブランド力の浪費」が行われていたわけです。
それが、~Tシャツ、~ポーチ、みたいな、メインの商品とはカテゴリの異なる、ただのロゴ付商品ならまだ許せることです。
そうではなく、メインの商品と同一カテゴリの商品で、メインの商品とはコンセプトの異なる商品が勝手に展開されるというグダグダな状況でした。
その結果、ブランドQのファンの間に不満感や不信感が高まっているように感じました。
まさに、「ブランド力の浪費」が行われた結果です。
そのような状況を打破するべく、メインチームがブランドのレギュレーションを策定するための行動を開始します。
が、ブランドの規模が大きくなってくると、往々にして、メインとなる商品展開を行うチームメンバーと、周辺商品の展開を行う担当者の合計の人数比率が、
1:9(当社比)
みたいなバランスになったりするわけです。
ブランドの展開規模が大きくなれば当然のことです。
つまり1の人数で、9の人たちを管理しなければならない。
9の人たちの中には、ブランドイメージを守ることなど考えもせず、ただ適当にモノ作って売ればいいと考えるkzの老害がいたりするのでそれはもう大変です。
しかし主担当だった先輩は懐柔するべきところは懐柔し、切るべきところは切ってレギュレーションをうまくまとめたのでした。
その後、1年もしないうちに私は弁理士の勉強に専念するために会社Tをやめてしまいましたが、ブランドQのメイン商品は今でも売り場で存在感を放っていると共に、様々な場所で関連商品を目にする状況が続いています。
あのころのブランド戦略のレギュレーション策定がなかったら今頃どうなっていたことか。
さてさて、
仮にあなたがブランドQのファンだったとしたら、ブランドQの商品には何を求めるでしょうか?
会社Tから出ていればOK?
ブランドQのロゴが付いていればOK?
匠Nさんが作っていればOK?
どれも違う気がします。
仮に匠Nさんが作ったものだったとしても、匠Nさんがモノヅクリに対する志を失って適当に作ったものだったら、それは嬉しくないはずです。
つまりブランドとは、
・作り手によって打ち立てられたコンセプト
・コンセプトに沿った上で情熱を持って作り上げられたクオリティ
・そのようにして作られたモノに対して、正当な主体によって付された伝統のロゴ(商標)
これらが合わさって初めて意味を成すものなのではないでしょうか。
いつの世も、コンセプトを見失い、目先の金儲けに走るブランドというのは散見されるものですが、そのようなブランドは確実に衰えているような気がします。
「あのロゴが付いているだけで嬉しい」
そんなブランドの価値は、ただロゴが付いているだけではなく、
モノヅクリに対する作り手の情熱が感じられるからこそ生じる価値なのではないかと。
って感じの話を踏まえて、次回は、
商標権の譲渡
について一言物申しつつ、偽物コンバースの事について書ければと思っています。