今年度、弁理士会の著作権委員会にて副委員長を務めさせて頂いているわけですが、そこでの研究テーマを、
コンテンツ内オブジェクトの知財保護
と名付けています。
その心はずばり、「どこでもドアは知的財産として保護されるのか!?」
ということです。
アニメ、漫画、ゲーム等のコンテンツ内に登場するアイテム、コスチューム等のオブジェクトを「コンテンツ内オブジェクト」と呼んでいます。
加えて、「聖地」に関しても研究しています。
実際にどこでもドアのような機能を持った道具が発明されれば、それは確実に特許によって守られることでしょう。
ここで話題とするのは、そのレプリカ、異次元を介して意図した場所と行き来するような機能はなく、形状だけを模したピンクのドア枠です。
これは、日本人の大半が「どこでもドアだ」と思うでしょう。
だから、こんな感じのドアを商品として売っていれば、「パクりだ!」という雰囲気は出てきてしまうかと思います。
他方で、西洋風のドア枠を作って売っている職人さんがいたとして、「ピンクのドア枠を作って売りたい」となった時に、こういったデザインになってしまうことがあるかもしれません。
本当に「知らなかった」のなら著作権的にはセーフですが、大人気作品であるドラえもん、「どこでもドアを知らない」というのはかなり難しい。
であれば、その職人さんはこのデザインを絶対に避けなければいけないのか!?
仮に、ピンクのドア枠を作れば全てが「ドラえもん」、「どこでもドア」によって生じる何らかの権利侵害になる、ということなら、それは人々の経済活動が不当に制限された状態、ということになると思います。
様々な判例から推定すると、恐らく「どこでもドア」のデザインに多少似ているピンクのドア枠を勝手に売ったとしても、それは「ありふれたモノ」として、少なくとも著作権法の保護対象とはならず、「侵害ではない」と判断されると思います。
「ドラえもん」がヒットして「どこでもドア」が有名になったら、あのデザインに似ているピンクのドア枠を作って売るのに権利許諾が必要、なんてのはやっぱりおかしいですよね。
では、
それをイイことに、どこでもドアの知名度を利用して商売をすることは許されるのか?
「は?あんなの普通のドア枠だろ?ピンクの普通のドア枠作って売ってるだけで、買う側が勝手にどこでもドアだと思って買ってるだけだろ。」
という言い訳は、どんな場合にも許されるのか?
某・大手ディスカウントショップに行くと、
「~風」というコスプレ衣装やコスプレ小道具がわんさか売ってます。
恐らく無許諾でしょう。
ちょっと古いですが、レイザーラモンHGが売れてた頃は、その衣装が必ず売ってました。
確実にレイザーラモンHGの知名度に乗っかっているのですが、衣装自体は一般的、かどうかはさておき、レイザーラモンHGが有名になる前から存在しているレザーのコスチュームです。
オレンジ色のボールに1個~7個の星のマークが描いてあったら、7つ揃うと龍が出てこなかったとしても、やはり思い浮かぶものはあります。
ではオレンジ色のボールに星のマーク描いて売ることは絶対にNGなのか?
王様達のヴィキングにて、天才ハッカーの是枝君が使っている愛機「ThinkPad X41」
是枝君はUbuntuをインストールして使っています。
仮に、レノボが「チューンナップ復刻モデル」みたいな感じでThinkPad X41のパーツを刷新し、Ubuntuをインストールして売ったら、その筋の人にはある程度売れる(気がします)。
それは、王様達のヴァイキングの権利侵害にはならないのか?
考えれば考えるほど、この「コンテンツ内オブジェクトの知財保護」の研究は、著作権に限らず「知的財産」というものの根幹に関わる研究だと感じます。
著作権法の他、
意匠法
商標法
不正競争防止法
一般不法行為
パブリシティ権
等々、あらゆる方面から検討した法律的な議論の他、「どうあるべきか?」という感情的な部分も含めてまとめたいと考えています。