絵師さんに直接お金を払って絵をリクエストする”commission”に関する知財

一般人が絵師にお金を払って描いてもらう海外の文化、コミッションとは?

この記事に基づいて、知財関係のレポートが欲しいというリクエストがありましたので書いてみます。

”commission”って何?というところから

まぁ上記リンクの通りなんでちょっとでも記事を読んでもらうのが一番早いと思います。
旧来の絵師さん(画家も含む)の商売って、自分が思う通りの絵を描いて、それを売る商売が一般的だと思うんですけど、”commission”の場合、「絵が欲しい」という人が「絵を描きたい」という人に「こんな絵を描いてください」とリクエストして絵を描いてもらってお金を払うシステムですね。

「絵を描く」という能力はとっても特別な能力だと私は思うので、単純に”イイな”と思います。
実際、私自身も某・超有名ゲームキャラのデザイナーに大枚はたいて希望の絵を描いてもらった事もありますし。

その時のハナシを許される範囲でしますと、実際にはその絵師さん(以降、A氏)と直接やりとりをしたわけではなく、A氏の作品を取り扱っているギャラリーの企画でした。
当然、A氏の絵が欲しい人の大半はA氏の絵ならなんでもいいわけではなく、A氏がデザインを担当したゲームのキャラクターの絵が欲しいわけです。
で、当然にゲームのメーカーの権利の問題が出てくるわけですが、そこはギャラリーの企画ですから、ギャラリー側で権利処理がされているわけですね。
但し「1キャラのみ」「絵の内容をリクエストしてみて、A氏が描くと言ったら」等、条件はありました。そういった条件の上で、ゲームのメーカーとの間で権利が処理されていたのでしょう。
でまぁ、一月では稼ぎきれない額をお支払いして描いてもらいました。

こんな超有名絵師さんの場合、「その人がデザインしたキャラ」という点で、「自分がデザインしたキャラの絵を描いて売って、何が悪いん?」という雰囲気もあるかもしれません。
が、大半の絵師さんはキャラクターデザインを担当した経験はないでしょうから、「自分のデザインではないキャラ」の絵を描いて売って商売するという点、同人誌と同様にグレーな感じが出てきます。
まぁ、キャラデを担当した絵師さんであっても、そのデザインの著作権は依頼主である制作会社や製作委員会の買い取りが定石ですから、キャラデを担当したアニメーターさん、デザイナーさんが自由に絵を描けるというケースは滅多にないのですが。

当然、オリジナルのイラスト、キャラクターなら、他人の権利云々の問題は全く生じませんので、今回は俗にいう「版権モノ」に限った話にします。
尚、「オリジナルのイラストを描く絵師さんが自分の権利を守るために気を付けるべきこと」に関しては別の記事で書けたらと思います。

でまぁ、杓子定規に言ってしまえば、俗にいう「版権モノ」は全てアウトなのですが、そんな回答は弁護士や弁理士でなくてもできる面白くもなんともない回答ですし、それが正解だと人々の営みに則した法律とは言えないと思うのでちょっと考えてみます。

同人誌と何が違うか?というコト

まず、「同人誌がアウトかセーフか?」と同種の問題はこのコミッションでも同様です。
同人誌が原作から借りているモノは、キャラデザ等の絵そのものに加えて、世界観やキャラ設定等の「概念」だと思うのですが、この「概念」は、法律の場では「アイデア」と呼ばれ、基本的には著作権の保護対象とはされません。
では、まったく保護されないのかというと、そう言うことでもなく、真正面から判断された裁判はないものの、商標法、不正競争防止法、民法といったところで可能性がありそうだな、というのが私が持っている感触です。
何件か、過去にその辺のことを書いてます。

で、今回はそことは違うところを考えてみますと

同人誌は、自分で描きたいものを描いて売ります。
これに対してコミッションの場合は、依頼者のリクエストに応じた絵を描きます。

こういう場合に出てくる理屈が「個人による複製だからセーフ」です。

例えば、
1.「よし!朝比奈みくるちゃんのエッチな絵を描くぞ!」
2.「できた!じっくり楽しむぞ~(:.;゚;Д;゚;.:)ハァハァ」
これは個人による複製なので人間として終わってても「複製」という観点については完全にセーフですね。

これに対して、
1.「よし!朝比奈みくるちゃんのエッチな絵を描くぞ!」
1´.「あ、この人すごくエロい綺麗な絵を描くな、この人に描いてもらおう!」
2.「できた!じっくり楽しむぞ~(:.;゚;Д;゚;.:)ハァハァ」
このように「1´」が挟まれたからって、「複製」の主体は自分自身でしょ?

というのが、コレ系の議論です。

書籍をスキャンして電子書籍化する「自炊」
その代行業のアウト/セーフに関しての最高裁判決が出ましたが、アウト!でした。

書籍の所有者の依頼に応じた行為ではあっても、独立した事業として営まれている以上、複製の主体は依頼者ではなく複製を実際に行っている行為者であり、依頼者の手足となって個人的な複製の範囲内で行われているとは言えない、という趣旨の判決。

過去、テレビ放送の録画代行のサービスのアウト/セーフを論じた裁判も同じような論点で同じように判決されてましたので、この結論はある程度見えていました。

じゃあ、コミッションはどうなのか?ということですが、そう簡単に当てはめができるものではないと思います。

というのも、
例えば自炊代行業ですが、「自炊」、「スキャン」といったことを一切うたわず、「何でも屋」、「便利屋」という形で商売している人を呼び、
「ここにある本、こういうやり方で全部スキャンしといて」
という形で作業を頼むのは、はたして違法でしょうか。
これは、何でも屋さん側が「スキャン代行」みたいなことを売りにしていないのであれば、セーフだと思います。
文字通り、何でも屋さんは依頼者の手足でしかないですよね。
まぁ、その何でも屋さんが「あの人は自炊代行が得意」みたいなことで有名になってしまうとグレーな感じが出てきてしまうのですが。

自炊代行の裁判について、地裁判決が出て知財高裁にいくかどうか、というタイミングだったと思うのですが、スキャンマンというサービスが出てきました。
このウェブサイトを見てみると、至る所に「依頼者の手足です」という建前を守ろうという配慮が見えますが、実は当時は「書籍の電子化」ということを明確にうたってました。
その後、「やっぱりだめだ~」と思ったのか、「派遣型スキャン代行サービス」という枠で、セーフなラインを守るように事業のPRの仕方が変わっていきましたね。
実際、やってることは今も昔も同じなんでしょうけど。

でも、これは実はとても大事な事です。
やってることは同じでも、自分から積極的に言ったか、依頼者から言われてやったか、が時として重要になってしまうのが法律だったりします。

これと同じような理屈で成り立っているグレーな商売は結構世の中にあります。
例えば、ソープランドとか、パチンコとかですね。
売春もギャンブルも違法なはずですが、どっちも建前を守ることによって平然と営まれています。

つまり、商売してる側が言ってはいけないことを言わないこと。
ソープランドであれば、「総額いくら」というのをお店が公に言うのはNGですし、パチンコであれば換金所は近所で勝手に営まれているものだということですね。

なのでコミッションに関して言えば、
「朝比奈みくるちゃんのエッチな絵が得意です」なんてことを言うのはNGで、
自分からは何も言ってないけど依頼者から頼まれたから描いた、という建前を貫き通すことではないかと。

ただし、アニメーターさんが自分が過去に担当した作画を言うことには何の問題もないでしょう。
「涼宮ハルヒの2話でみくるちゃんのバニーガールのカット担当しました!」
「エンドレスエイトでみくるちゃんの水着姿描きました!」
何も問題もないはずです。
そして、そういったカットを担当したアニメーターさんに是非ともみくるちゃんの絵を描いてもらいたいと思うのもまた人情。

つまり何が言いたいかというと、
アニメーターさんは本文であるアニメ作りにまずは全力投球して頂いて、「自分が絵を描いた」と胸を張れる作品を増やしてほしい。
その結果、「あのキャラはあの人の絵がいいよね」と言われるようになった結果として、自分から「このキャラ描きます」「このキャラ得意です」という事を言うのではなく、あくまでも依頼に応じる形でキャラを描くのはありなのではないかと、こう思うわけです。

難しいのは、「コミッション絵師」みたいなことで有名になってしまうと、「実質的にキャラの絵を描くことを売りにしているのも同然」みたいなことで違法性が肯定される方向に傾くような気もしますし、なにより、コミッションにかまけて本文のアニメーター業をおろそかにして欲しくはない。
あくまでも、アニメーター業の合間の小遣い稼ぎの範囲を超えず、且つ「ファンを喜ばせる」という目的の上で、そして何よりも、「作品の知名度、作品の顧客吸引力を借りている」ということに対する節度を持ってやる分には、なんら咎められることではないと思うわけです。

株式会社虎夢にて、クリエイターのサポート、マネージメントを請け負ってますが、権利的にセーフなやり方を考えながらやるコミッションの窓口代行なんてことも需要があるのかな?

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