高校、大学、社会人2年目位までバンドをやってました。
学生の間は当然に、社会人になった後も少しの間はプロへの夢を捨ててないくらい没頭してました。
そんな幸せなバンドマン、中でもバンドマンとして一番油が乗っていた大学生の頃、20年近く前のオハナシ。
確か渋谷のOn Air Westだったと思うんですが、先輩のライブを観に行きました。
対バンだったので複数のバンドが出ていて、そのバンドの1つのデモテープを貰って帰ったんですが。
データ化して未だに聴いてます。
S.Dというバンド名で、曲名は「Cold Tommy」というようです。
サヨナラさえ 言えない
心の痛みだけ 癒えない
嗚呼 君が奪われてく
引用 「Cold Tommy」/S.D (カタカナ、漢字の別は独自)
※JASRAC管理楽曲ではないので悪しからず。管理外楽曲使っても金出せって言ってくるのがJASRACクオリティですが。
ネットで検索してもそれらしいバンドは出てきません。
YOUTHQUAKEに同名の楽曲があるようですがおそらく違う曲です。
The cold tommyという音楽グループがヒットしますが、おそらく無関係です。
歌詞を検索しても全くヒットしないので、その曲はメジャーシーンに出ることは無かったのでしょう。
なので、この曲を聴いているのは、世界で自分1人なのではないでしょうか。
作った人、演ってた人が聴いてれば別ですが。
過去、自分でもオリジナル曲を作ったりしてましたが、自分が作った曲なんて自分で聴きませんしね。
やっぱりあの曲聴いてるのは世界で自分1人だと思う。
例えば、私が運営をやらせて頂いているスタジオ・ライブ☆チャンネル
「この生放送でこの曲を流したい!」と思ったとします。
ってか、本当に流したい。
その場合、主に2つのハードルをクリアしなければいけません。
・楽曲の著作権者である作詞・作曲者に許諾を受ける
・録音された音源の実演家であるバンドのメンバーに許諾を受ける
前者は著作権、後者は実演家の権利・レコード製作者の権利です。
連絡なんてとれねぇよ。。。
これが「孤児著作物」です。
権利者が世の中のどこかに存在している事は明らかなのですが、誰かもわからないし、連絡をとる方法もわからない。
その結果、この「Cold Tommy」はいい曲なのに前渋が1人で楽しむ、近しい友人にオススメする、それくらいしか活躍の場を与えられないわけです。
もったいないですよね!?
クスリやってそうなDQNが集まってクルクル体回して踊ってる音楽と言えるのかも怪しいものが巷には溢れ、一人の人間の心を20年近くも捉えている楽曲が日の目を見ない。
仕方の無いこととは言え、やるせない気持ちになります。
で、
「もういいや!権利者に伝わることなんて無いだろうし、仮に権利者に伝わって怒られるならその時点で真摯に対応する!ニコ生で使っちゃえ!」
というのも一つの方法だと思います。
大切なのは「法を守ること」ではなくて、「法目的が達せられること」というのが前渋の持論です。
法目的とは、言うまでも無く「文化の発展」です。
・「Cold Tommy」の権利者と連絡が取れないので公開できず、前渋の死と共に「Cold Tommy」も歴史の中に埋もれました。
・権利者には無断だけど前渋がネットで「Cold Tommy」を公開してしまったところ、多くの人の耳に残り、ネット上で一時期ちょっとしたブームになりました。
前者と後者、どっちが「文化の発展」にとって相応しいんでしょうか。
色んな記事上で書いている事ですが、知財というのは「守ること」が趣旨ではなく、守ることによる「作った人の利益」と、公開することによる「みんなの利益」とのバランスをとるためのものです。
権利者の方と連絡が取れない「Cold Tommy」を公開することが悪いことなのか否か、非常に悩ましいです。
別に金儲けしようってわけでもないですし。
もちろん、権利者の方が現れれば真摯に対応しますしね。
で、
著作権侵害の非親告罪化です。
前渋が「Cold Tommy」を無断で公開したとします。
ネット上の一部の範囲で一時期ブームになって、人々を楽しませました。
でも権利者の方にはそれが伝わりませんでしたので、誰も嫌な思いをしないし、誰も文句を言いませんでした。
当然、前渋を著作権侵害で訴えるような人もいませんでした。
でも前渋が警察の文句ばかり言っていて目障りだったので著作権侵害で警察に逮捕されました。
極端に言えば、これが著作権侵害の非親告罪化です。
喧々諤々議論された結果、非親告罪として事件化する際に色々と条件付けがされているようですが、こんな感じの警察にとって都合の悪い人物の逮捕のために使われる可能性が含まれてしまう、それが非親告罪化です。
で、1年以上前の事なので、今だから言えるハナシとして
当時、私は弁理士会の著作権委員会にて、TPPの著作権に関する条項に対する意見の取り纏めを行っておりました。
で、当然に著作権侵害の非親告罪化に対して別件逮捕の危険性の指摘をしたわけですが、当時の弁理士会の執行部から帰ってきたコメントに驚愕
「捜査上の要請」(別件逮捕が役にたつ面もあるという前提)を考慮すべし
こんな連中が「知財の専門家」たる弁理士の管理組織をやってて良かったんでしょうか。
まぁ、今年の4月に会長が変わって執行部の面子も刷新されてはいるので、これが今の弁理士会の意思って事ではないはずなんですが。
今年の執行部は先代に輪をかけて、、、とうハナシもチラホラ。
さておき、
著作権侵害が親告罪である今なら、「Cold Tommy」を権利者、実演家の方に無断で公開して皆に聴いてもらおう!っていう思い切った超法規的な行動も取れます。
が、非親告罪化されたら多分できないでしょう。
非親告罪としての取り扱いが具体的にどのような法律条文になるかにもよりますが、警察の気分次第で逮捕される可能性があるならやっぱりできませんよね。
著作権侵害の非親告罪化が表現規制につながる、表現の萎縮を招く、その可能性はゼロではありません。
著作権侵害が非親告罪化されるかどうかに関わらず、「良い作品を広める」という趣旨の上で孤児著作物についてのケアはして欲しいものです。
「Cold Tommy」を作ったS.Dの方、これ読んでくれないかな。。。