米国最高裁判決、グーグルvオラクル Java訴訟 ~その4.使用の目的と性質~

~その1.結論とシラバス~
~その2.技術的事項の説明~
~その3.著作物の性質~
の続きです。

フェアユースの判断要素、
(1)使用の目的と性質
(2)著作物の性質
(3)著作物全体に関連して使用される部分の量と実質性
(4)著作物の潜在的な市場または価値に対する使用の影響
についての判決文での説明を見ている途中、前回は判決文の順番に沿って(2)著作物の性質、から説明を開始しました。
今回は(1)使用の目的と性質(“The Purpose and Character of the Use”)、についてです。判決文のPDFでは28ページ。

1.考えの大前提 著作物の使用が「変容的」であるか否か。

まず、考えの前提として、コピーによる使用が、著作物に対して「新しい表現、意味もしくはMessageと共に」「新しい何かを付加し、進んだ目的や異なる性質と共に、変化させる」ものであるか否かが検討される事が示されると共に、そうであることを示す言葉として「変容的」(“transformative”)という言葉が提示されます。

In the context of fair use, we have considered whether the copier’s use “adds something new, with a further purpose or different character, altering” the copyrighted work “with new expression, meaning or message.” … In answering this question, we have used the word “transformative” to describe a copying use that adds something new and important.

その上で、具体例として以下の二点に言及されます。

・「芸術的な絵画」は、著作権で保護された「消費者主義についてコメントするための広告ロゴ」を正確に複製した場合であっても、フェアユースである可能性があること。

An “‘artistic painting’” might, for example, fall within the scope of fair use even though it precisely replicates a copyrighted “‘advertising logo to make a comment about consumerism.’”

・パロディは、原作に対してコメントしたり批判したりするものであって、「その主張を明確にするためにオリジナルを模倣する必要がある」ため、「変容的」であり得ること。

a parody can be transformative because it comments on the original or criticizes it, for “parody needs to mimic an original to make its point.”

そして、本件に対する見解として、以下の三点が指摘されます。

・Googleによるコピーは、プログラマーが特定のタスクを実行する実装プログラムを呼び出すことができるようにするためであること。

Google copied portions of the Sun Java API precisely, and it did so in part for the same reason that Sun created those portions, namely, to enable programmers to call up implementing programs that would accomplish particular tasks.

・教育や研究のためのプログラム著作物の使用においても、これと同じことが行われるため、ここで検討をストップするとプログラム著作物の機能的文脈におけるフェアユースの範囲が非常に制限されてしまうこと。

But since virtually any unauthorized use of a copyrighted computer program (say, for teaching or research) would do the same, to stop here would severely limit the scope of fair use in the functional context of computer programs.

・従って、「変容的」であるか否かを判断するために、より具体的な「目的」と「性質」を検討すべきであること。

Rather, in determining whether a use is “transformative,” we must go further and examine the copying’s more specifically described “purpose[s]” and “character.”

2.Google の使用の目的についての見解

続いて、その3.において確認されたようなことが改めて述べられた上で、以下の三点が指摘されます。

・Google によるSun Java API の使用が Android に関連するタスクと特定のプログラミング要求に限定されており、かつスマートフォン プログラムで役立つタスクを含めるために必要な場合にのみコピーされたこと。その場合も、馴染みのあるプログラミング言語の一部を破棄し、新しいタスクを学習することなく、プログラマーがそれらのタスクを呼び出すことを可能にするためにのみであること。

・The jury heard that Google limited its use of the Sun Java API to tasks and specific programming demands related to Android. It copied the API (which Sun created for use in desktop and laptop computers) only insofar as needed to include tasks that would be useful in smartphone programs. …And it did so only insofar as needed to allow programmers to call upon those tasks without discarding a portion of a familiar programming language and learning a new one.

・Google はAndroidにおいて、異なるコンピューティング環境で動作する新しいタスクのコレクションを提供していること。これらのタスクは、Googleによって作成された新しい実装コードを使用して実行されること。

To repeat, Google, through Android, provided a new collection of tasks operating in a distinct and different computing environment. Those tasks were carried out through the use of new implementing code (that Google wrote) designed to operate within that new environment.

・Google の行為は「再実装」(定義:既存言語と同じ言語と構文を再利用するシステムの構築)と呼ばれ、この場合、プログラマーは既存システムにおいて学んだ彼らの基礎的なスキルを新しい環境で使用可能であるとアミカスブリーフで述べられていること。

Some of the amici refer to what Google did as “reimplementation,” defined as the “building of a system . . . that repurposes the same words and syntaxes” of an existing system—in this case so that programmers who had learned an existing system could put their basic skills to use in a new one.

3.インターフェースの「再実装」についての一般的な見解

更に、アミカスブリーフの記録として、インターフェースを再実装することでコンピュータープログラムの開発を促進できる方法として以下が示されました。

The record here demonstrates the numerous ways in which reimplementing an interface can further the development of computer programs.

・さまざまなプログラムが互いにやりとりするために共有インターフェースが必要であること。

The jury heard that shared interfaces are necessary for different programs to speak to each other.

・(異なる環境で?)プログラマーが習得したスキルを使えるようにするためには、インターフェースの再実装が必要であること。

It heard that the reimplementation of interfaces is necessary if programmers are to be able to use their acquired skills.

・APIの再利用は業界では一般的であること。

It heard that the reuse of APIs is common in the industry.

・Sun自体がJavaの作成に際して既存のインターフェースを使用していたこと。

It heard that Sun itself had used pre-existing interfaces in creating Java.

・Sunの幹部は、スマートフォンプラットフォームでの使用を含め、Javaプログラミング言語を広く使用することで会社に利益がもたらされると考えていること。

And it heard that Sun executives thought that widespread use of the Java programming language, including use on a smartphone platform, would benefit the company.

4.証人による証言のまとめ

そして、証人による説明のまとめとして以下が示されます。

・Googleが再実装したJava SEの部分は、より大きなJava開発者コミュニティ内での使用の一貫性を維持するのに役立った可能性がある。

“The portions of Java SE that Google reimplemented may have helped preserve consistency of use within the larger Java developer community”

・関数型コードの合理的なフェアユースを許可することで、市場全体が成長するための新しい機会を生み出すイノベーションが可能になる。

“Allowing reasonable fair use of functional code enables innovation that creates new opportunities for the whole market to grow”

・インターフェースの再実装は、人気のあるプログラミング言語の普及を促進した。

“Reimplementing interfaces fueled widespread adoption of popular programming languages”

・業界標準となったソフトウェアの主に機能的な要素の著作権は、著作権所有者に反競争力(競争を阻害する力という意味か?)を与える。

“Copyright on largely functional elements of software that have become an industry standard gives a copyright holder anti-competitive power”

ここで言及されている「機能的」という言葉の理解が非常に重要になります。
判決文の趣旨を簡単に表現するならば、「プログラム著作物の著作権は、プログラム著作物の”機能的”な部分にまで及ぶべきではない。プログラム著作物の”機能”は保護されるべきではない。」ということになるかと思います。

これがプログラム著作物と特許との大きな違い。
「プログラムを守る」ということで、なんとなく「技術を守る」と思ってしまいがちなところがありますが、著作権の趣旨はそうではありません。あくまでも表現物(ここではプログラムコード)を守るものであり、そのプログラムコードによって実現される「技術的な機能」を守るような結果になってはいけないわけです。

そして、対象となっている Sun Java API の「技術的な機能」は、「特定のタスクを実行する実装プログラムを呼び出すことができるようにすること」であることが指摘されており、その機能を保護するような結果になってはいけないし、Sun Java API を使用した Google の行為は、その機能を活用することで「新しい何かを付加し、進んだ目的や異なる性質と共に、変化させる」ものである、すなわち「変容的」であるというわけです。

5.結論+α

以上より、Googleによる「使用の目的と性質」は「変容的」であって、フェアユースの適用に対して肯定的に作用すると結論付けられます。

尚、「使用の目的と性質」を検討する上で考慮されるべき要素として「商業性」「誠実さ」についても補足的に触れられています。

商業性については、非商業的であることがフェアユースにとって有利に働くことはその通りだが、その逆は必ずしも成り立たないのであって、例としてニュース報道などが挙げられ、それよりも Google によるコピー(Androidへの再実装)が果たした「変容的」な役割を重視するべきであると述べられました。

誠実さについては、そもそも誠実さがフェアユースの判断に対して重要なファクターであるか否かについて疑問が投げかけられつつ、本件では重視されないと判断されています。

というわけで、フェアユースの4つの判断要素のうちの2つめ、「使用の目的と性質」も、フェアユースの適用に肯定的であることが示されました。
(1)使用の目的と性質 →肯定
(2)著作物の性質 → 肯定
(3)著作物全体に関連して使用される部分の量と実質性
(4)著作物の潜在的な市場または価値に対する使用の影響

その3.著作物の性質< >その5.使用された部分の量と実質性

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