2025年に書いた記事は(本稿を除くと)6件でした。
来年はせめて月一本くらいは書きたいものです。
で、年末の挨拶も兼ねて何か書いておこうと思ったタイミングで脳内で膨らんでいることを吐き出しておこうかという次第。
商標のセカンドピニオン的な依頼を受けることがたまにあります。
内容としては登録済みの商標のレビューや拒絶理由通知をうけた出願のレビューなどです。
で、登録済みの商標のレビューで割と多いのが、「無駄な指定商品・役務」です。
商標登録というのは、自身で使用する商標について登録を受けることが大前提なのですが、商標法における「使用する」ということ(商標的使用)が実は曲者だという事はまだまだ知られていません。
レンタルさんの記事で自分が指摘したことも「商標的使用」に関する誤解、知識不足からくるものですね。
弁理士会の無料相談で商標に関して相談に来た人に「お伺いした事業内容から察するに、この指定商品・役務は登録しても意味ないですね」という話をすることはお約束のようになっています。
なので、登録済みの商標に関するレビューで「この指定商品・役務は意味ないですよ」というコメントをすることは多い、というか毎回言ってるような気がします。
別に使用しなくても登録しとくぶんにはよくない?
という意見もあるでしょう。
それもいいと思います。その分無駄な金を払ってもいいんなら。
で、セカンドオピニオンの依頼者にそこを説明するとやはり憤慨するわけですね。
そんな無駄な金払いたくなかった!
って。
◆使用しない商標のデメリット
では、「商標的使用」に該当しない商標登録についてどんなデメリットがあるのかを整理してみましょう。
なお、「商標的使用」の詳しい説明を始めると記事一つ分を超えて長くなるので他の記事に譲ります。
これとかこれとかを読んでみてください。
1.お金がかかる
商標登録は指定商品・役務の区分ごとに特許庁にお金を納めます。
2025年12月現在、一区分ごとに32,900円/10年です。
なので、使用しない商品・役務のみの区分があると、その区分に支払ったお金は丸々損ということになります。
また、出願を弁理士に依頼した場合、手数料は区分数や商品・役務の数に応じて計算されることが一般的なので、そこでもお金がかかります。
更に、指定商品・役務が多ければ、そのぶん審査で拒絶理由通知を受ける可能性も上がりますから、そこでも弁理士費用がかかります。
2.取り消される&更に金がかかる
(商標登録の取消しの審判)
第五十条 継続して三年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが各指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をしていないときは、何人も、その指定商品又は指定役務に係る商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。
3年以上継続して使用していない状態が続いた商標(指定商品・役務)は、他者からの審判請求によって取り消されます。
「使用していないものが取り消されるのは別にいい」かもしれませんが、審判請求を受けた際に適切に対応しないとちゃんと使用している商品・役務まで巻き添えで取り消されてしまうかもしれません。
そのためには弁理士に依頼することになり、費用がかかります。
そして、審判の代理に要する費用は出願の代理に要する費用より高くなることも珍しくありません。
3.権利行使できない可能性がある
商標法というのは、使用により化体した信用の保護が趣旨です。
まったく使用していなければ、少なくともその商品・役務について権利者の信用が生まれている可能性は低いです。
そうすると、仮に同一/類似の商標について指定商品・役務の範囲で他者が使用をしていたとして、それに対して権利行使をして他者の使用をやめさせようとしても、訴訟では負ける可能性があります。
その指定商品・役務について、その商標に権利者の信用が化体していなければ、他者が類似の範囲で使用しても出所の混同が生じることはなく、損害が発生していないので権利侵害には当たらないと判断されるからです。
商標法の伝家の宝刀、小僧寿し事件はそのような趣旨の判決です。
とまぁ、使用しない商標が無駄であるという理由として代表的なのはこの辺りです。
これ以外にもカルマが下がるとか徳が減るとか企業価値が下がるとか、そういう思想的な事を言い出したらたくさんあります。
イメージが重要な企業としては、むしろそっちの方が重要だと自分は思います。
◆商標登録出願代理における弁理士の役割とは
で、こういった説明は依頼を受けた弁理士が一通りするべきだし、依頼者の事業の内容や商標をどんな風に表示させていくつもりなのかという事までしっかりヒアリングして、商品・役務ごとに使用に該当するのか否か、登録して意味があるのか否か、ということをしっかり検討するべきだと考えている、少なくとも自分はそうしているのですが、世間の「商標専門」の弁理士はそうではないようですね。
依頼者が言う指定商品・役務を最低限体裁整えて願書を清書するだけが仕事だと思っている人が多いようです。
大企業の知財部から依頼をうけてやる分にはそれでいいと思います。
やっこさんらに上記のような説明をしたら、むしろプライドを傷つけられたとして逆切れしてくるのが落ちなので、大企業の商標の仕事を請けるんなら余計なことはしない方がいいんでしょう。
他方、商標出願をするのが初めてだという個人の依頼者や中小企業の依頼者には、それでいいはずがありません。
セカンドオピニオンで無駄な商標登録をぶら下げてくる人はたいがいそういった人たちですね。
自分で調べて自分で出願したというのであれば然もありなんですが、弁理士に依頼して費用を払って登録した商標が無駄な商品・役務だらけというのは本当にうんざりする話です。
だったはずなのですが、そんなセカンドオピニオンや巷にあふれる無駄な商標登録、自身が代理人として不使用で取り消した商標登録などにより、うんざりする気持ちすら失せてきました。
◆最近の話
例えば最近こんな話がありました。
商標の更新登録に関して、無駄な商品・役務がないかレビューをするという趣旨のセカンドオピニオンでした。
で、権利者の事業内容と照らし合わせると、登録されている全5区分すべて不要、少なくとも権利者の主要事業にはかすりもしていないものでした。
更新登録時の相談ですから、10年間その状態だったということです。
が、セカンドオピニオンの難しいところで、出願当初の詳しい経緯を知っているわけではないので、「全部無駄。更新不要。」と簡単にコメントできるものでもなく、まずは「現状の事業内容とは遠いようですが、これらの指定商品・役務の登録に関して、出願時にどのような経緯があったのか、今後の事業の予定はどのようになっているのかを詳しく確認しましょう」というコメントになります。
そんなこんなで、権利者から出願当初の代理人に連絡してどのような経緯でこの登録内容になっているのかを確認することになったようなのですが、その代理人からの返答がまぁ酷かった。
・我々の仕事は依頼内容に基づいて願書を作成して商標登録を得ることである
・本件の依頼に際しての商品・役務の要望は以下の通りである
という、
我々は言われた通りにしただけだ。我々は悪くない。
と言わんばかり、というか完全に言ってる返答がきたようです。
これはさすがにうんざり。
そもそも、出願当初の経緯を確認したいという趣旨の連絡に際してこんな言い訳じみた返答をいきなり返してくるということは、自身がやってることが後ろめたいってことですよね。
これで「商標専門」なんですね、ふぁ~。
◆ただし!?
じゃあ、依頼者が完全な被害者かというとそうではない場合もあります。
それは、「打ち合わせ無料」です。
自分は弁理士会の無料相談以外で無料で打ち合わせに対応することはしないのですが、世間には「打ち合わせ無料」をうたって依頼をうける弁理士がわんさかいます。
が、弁理士が無料で打ち合わせに対応するのは出願の代理で稼ぐためです。
で、そのために無料で打ち合わせを受けた弁理士が、「その出願意味ありませんよ。」なんて言うでしょうか?
また、区分数が増えればそれだけ依頼料が増えるという状況の中で、「この指定商品・役務、この区分は意味ありませんよ。」なんて言うでしょうか?
自分が打ち合わせに金を取る一番の理由がこれです。
まぁ、打ち合わせや事前検討を名目に費用を請求しておきながらこんな仕事をしている弁理士もいるようですが。
過去の記事でも何度か書いてますが、自分が依頼を受けるに際して心がけているのは「依頼人の真の利益」なので、依頼人の目指していること、目先の商標登録が依頼人のためにならないと感じればそのように伝えます。その結果として、まったくその後の依頼、出願の代理などが生じないことなんて日常茶飯事です。
血気盛んな頃はそんなことを無料でやったりもしてましたが、よほど肩入れできる依頼者でもない限り自分の人生が削られるだけですし、考えようによってはダンピングですからもうやりません。
新規の依頼者から連絡が来た際に最初に「打ち合わせにも金取ります」と伝えると体感7割くらいは連絡がなくなります。
その結果として、私との打ち合わせに払うよりも高い金を無駄な商標登録に払っているのでしょう。
大事なのは依頼者本人の納得感なので、少なくとも出願時点でそれで満足ならばその依頼者にとってはそれが正解です。
私は打ち合わせにも金を払う賢明な依頼者のために力を尽くします。
というわけで、皆様良いお年を。来年もよろしくお願い致します。




