チバニアン商標で騒ぐのは時間の無駄でしかないからほっとけ

何故こう、知財のこと、特に商標が世間で話題になる時ってのは駄目な感じなんでしょう。

こちらの記事
ギョーザにキムチ、「チバニアン」相次ぐ商標出願

千葉県市原市田淵の地層が地質年代の模式地として申請されており、それが認められれば約77万~12万6千年前の時代が「チバニアン」と呼ばれるようになる。
それを見越してか、「チバニアン」を商標登録出願したヤツらがいて、中には既に登録されているものもあって、さあ困った!

という内容。

はぁ、、、

あ、ちなみにアイキャッチ画像ですが、流石に千葉まで写真を取りに行ってられなかったので、フリー素材の地層の写真を拝借しました。でも房総の崖らしいです。

で、この記事ですが、まず

商品区分のうち「印刷物」について、「チバニアンの啓発のために出版物などを作製する際、問題となる可能性がある」と懸念を示して除外を求めた。

というところ。

一番気にしなくていいところにわざわざ異議申し立てしちゃってるという残念なお知らせ。

他方、

一方、市原市は、無料の広報紙などでチバニアンと記載しても問題ないとして異議申し立てを見送った

これは、結論はそれでいいんですが「無料の広報誌だから」という理由なら微妙です。

これはもう判例で答えが出てます。

過去の記事でも紹介しましたが、「がん治療最前線事件(東京高裁平成16年(ネ)第2189号)

新聞・雑誌を対象とした「がん治療最前線」という商標権があるのに対して、「がん治療の最前線」と表示された書籍を出してもセーフ。

別に、「がん治療最前線」/「がん治療の最前線」ということで、「の」が入ってるからセーフ、ってことじゃないですよ。

本件書籍の需要者は,「がん治療の最前線」との被告標章を,最新のがん治療法を内容とする記事を掲載した雑誌であることを示す表示であると理解すると解される。

というのが判決文での説明。
商標とは「商売の看板」であって、「商品の説明文」ではないということです。

つまり、「チバニアン」が正式名称となった場合に、それに関する出版物の発行に際して「チバニアン」という言葉を使用することは商標権によって妨げられるものではないって事です。
「チバニアン」を内容とする記事などを掲載した出版物であることを示す表示であると理解されるからですね。
「念のため潰しておこう」ってんなら気持ちもわかりますけどね。でも「チバニアン」が正式名称になる前にどういう理由で潰すんだろう。
まぁ、正式名称じゃなかったとしても、「正式名称を争っている」という点で行けるのかな?

 

で、まぁせっかくなんで登録や出願の状況をみてみますと、こんな感じ

既に登録されているもの、ベストライセンスよりも1年近く早い動き。(褒めてはいない)

内容を見てみますと、

登録番号:第5929242
登録日:平成29年3月3日
出願日:平成28年8月25日
商標:チバニアン
権利者
氏名又は名称:村山 彰
指定商品
第14類 貴金属,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,キーホルダー,宝石箱,身飾品,貴金属製靴飾り,時計
第16類 紙類,文房具類,印刷物,書画
第28類 おもちゃ,人形,愛玩動物用おもちゃ,囲碁用品,チェス用品,運動用具,釣り具

んで、16類の「印刷物」について異議申し立てがされたと。

どうせ潰すなら全部潰せば良かったと思うんですが、まぁ潰すには労力が必要なので、極地研としては自分達に関係のない商品や役務まで潰すような手間は掛けないってことでしょうね。

 

じゃあ、「貴金属」とか、「おもちゃ」等のそれ以外の商品・役務について「チバニアン」という言葉を使う権利は、この村山さんに独占されてしまうのか?
という問題ですが、

んなことあるわけねぇ。

 

以下の話は、「チバニアン」が正式名称として採用された場合を前提とします。
例えば、第三者が「チバニアン」を「貴金属」に使用したとしましょう。
そうすると、形式的には 商標権侵害! ということになるわけです。

で、ここで考えるべき事は何か?

それは、その第三者が販売なり何なりする「貴金属」がどのような商品なのか?という事です。

「チバニアン」なんて表示をするくらいですから、市原市田淵や、その地層に関する商品なのでしょう。
その地層から採れた鉱物だったりするんでしょうか。

「チバニアン」と表示して売るのは、それを説明するためですよね。
であれば、商標権の侵害になんかなりません。

逆に

「チバニアン」に無関係なのに、「チバニアン」として表示して売りたいって事、あるんでしょうか。

そんな事はあり得ないと思うんですが仮にあったとして、

それは救えない、救う必要も無い

と思います。

商品やサービスの内容で特に意味が無いのに「チバニアン」という商品名やサービス名を付けたいと言うのは、商売の内容で勝負せず、「チバニアン」の知名度に安易に乗っかろうとしているだけ。
やってることは商標ブローカーと大して変わりませんね。

なので救う必要なし。

 

「チバニアンキムチ」とか、自分からすると「なぜ商標登録出願したし。。。」というレベルです。
出願人が千葉県市原市となっているので、出願人の有限会社ともえダイニングは市原市で生産されたキムチに「チバニアン」と付けて売るのでしょう。
現在、出願の指定商品は「キムチ」となっていますが、「チバニアン」が正式名称として採用されれば、指定商品は審査において単なる「キムチ」から「千葉県市原市で生産されたキムチ」や、「千葉県市原市田淵で生産されたキムチ」にまで限定させられると思います。

かたや、チバニアンが正式名称となるのは年代なので、最も厳しくこじつけて審査をするならば、

「チバニアン」は約77万~12万6千年前の年代を意味するものであるところ、「チバニアンキムチ」はその年代から漬け込んだキムチであることを想起させる。
そのような観念が想起されるとして、実際にそのような期間漬け込まれたキムチに「チバニアンキムチ」と表示することは、商品の質をそのまま表示しているにすぎず、3条1項3号により登録を受けられない。
他方、そのような期間漬け込まれていないキムチに「チバニアンキムチ」と表示することは、商品の品質を誤認させることになるため、4条1項16号により登録を受けられない。

※ネタですよ?

商標の審査も水物なので、そのまんま「キムチ」のまま登録されてしまうかもしれませんが。

「チバニアン」が正式名称として登録された場合に一般的な観念として認められるのは、その年代や市原市田淵という土地がメインになってくるでしょう。
要は、「それらの観念に関して「チバニアン」という表示を行う商品や役務は独占できませんよ」という審査もされ得るということです。

そして、司法の場においても、他の業者が「チバニアン」ゆかりのキムチを生産して「チバニアンキムチ」として売ることは止められません。
逆に、「チバニアン」にゆかりがないキムチに「チバニアン」なんて付けて売りたいとは思わないですよね。
それをやろうとする手合を救う必要がないのも説明したとおり。商標の基本は早い者勝ちです。

 

商標のこういった問題に関して、「判例で平気だって出てる。気にすんな!」って指摘が出てこないのが残念で仕方がありません。

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