月曜から夜ふかしを観まして、ちょっとこんなもん書いてる状況でもなかったりするのですが我慢できずに書いちゃいました。
短いし。
ロバート秋山の体モノマネTシャツが特許になっている。
ということで調べてみたところ、この特許のようです。
この手の話題の時に
嫌だな…
と思うのは、イメージが先行して実際よりも広い範囲が権利になっているという誤解が広まることです。
今回であれば、Tシャツの裏に顔が逆さまに描いてあると権利侵害になる、みたいな感じで。
全然そんなことはないので、どうすればこの特許の侵害になるのか、どうすればこの特許から逃げられるのか、について書いてみようかと。
特許の権利内容は【特許請求の範囲】という文章で記述され、その文章に従って権利範囲が定まります。
本件であればこんな感じ。
【請求項1】
特許6366202号
プルオーバー型の上衣の前身頃の裏地に人物の顔をかたどった像が前記上衣の上下方向に対して倒立状態で設けられ、前記前身頃の表地に、前記像が有する目の位置を示す目印が設けられ、
前記目印は前記像の目の並び方向に延び、且つ前記像の目の並びの位置と合致した位置に設けられており、前記目印の両端はそれぞれ前記像の輪郭と対応する位置にあることを特徴とする小道具。
この文章によって定まる条件が全て満たされた場合にのみ特許権の侵害となるのが原則です。
条件を箇条書きにしてみると、
・プルオーバー型の上衣であること
・前身頃の裏地に人物の顔をかたどった像が逆さまに描かれていること
・前身頃の表地に、裏地に描かれた顔の目の位置を示す目印があること
・目印は
→裏地の人物像の目の並び方向に延びていること
→目の位置に合った位置に設けられていること
→目印の両端位置が裏地の人物像の輪郭に対応していること
となります。
この条件が全て満たされた場合にのみ権利侵害となる、即ち、どれか一つでも条件を外せば権利侵害にはならないということです。
特に、上記で下線を付した部分である「且つ前記像の目の並びの位置と合致した位置に設けられ」の部分は、権利化の過程で追加された部分なので特に重要な条件であると認識されます。
つまり、この条件を外せば権利侵害にならないことは確実です。
さらに言えば、表地に目印(これ、文字通り”目”印になってるのがジワジワきます)があることが前提になってますんで、表地が無地であれば完全にセーフですね。
で、なんですが…
紹介されてたサンリオコラボグッズの前掛け。
あれは、
プルオーバー型の上衣
なんすかね?
さておき、
個人的には、このグッズに関しては「ロバート秋山コラボ」というイメージのほうが重要な気がします。
なので特許というよりは芸能人の知名度、つまりパブリシティ権の話になるのですが、パブリシティ権というのは特別に立法されたものではなく判例上認められているだけです。
そして、判例上は「氏名や肖像」にのみ認められているという状態なので、「体モノマネ」のイメージを勝手に使うことがロバート秋山のパブリシティ権を侵害するというのは、現状では難しい主張になってしまうかと。
ただ、グッズを作る側としても「ロバート秋山とは無関係にやってる」というのはイメージ的に良くないですし、何らかの「言い訳」が欲しいところ。
でもパブリシティ権なんていう条文のない権利の契約は不安定だし、法的に何に金を払えばいいのかイマイチわからない。
そんな中で、「体モノマネTシャツが特許になっているので、特許の実施権契約を」というのは商業的にいい落とし所だったりするのかもしれません。
プルオーバー型の上衣じゃないから特許の権利範囲外であっても、目の位置の目印が表地側に描かれてなくて特許の権利範囲外であっても、
ロバート秋山「体モノマネ」特許の許諾品
というのは、売る側にとっての安心感としても、営業広告としても意味がある気がします。
芸能人×特許 という組み合わせが(法的にはともかく)パブリシティ権という不安定なものに対するカウンターとして機能していく可能性を感じたりした次第です。