商標と商号(&オマケでIT関係に関する指定役務の不具合について)

ちと確認しておきたいことがありまして、商標と商号との関係について判例をまじえて書きます。

登記された法人名、社名、すなわち商号が他社の商標権に抵触する場合の法律問題です。

まずは条文

第二十六条 商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
一 自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標

自分自身の名前を普通に表示しても商標権の侵害にはなりませんよ、という条文です。

これは自然人、普通の人だけでなく法人、つまり会社も含まれますので、会社の名前、つまり商号が対象になってきます。

極端な例をつくると、「ソニー」という名称で法人登記をした場合、「ソニー」を普通に表示しても商標権の侵害を問われることはありません、という話です。
マジで誰か「ソニー」で法人登記して電子機器とか音響機器とか作る会社やってみてくんないかな。
※「株式会社」等は付けない、単なる「ソニー」であることがミソです。

とまぁこれは極端すぎる例なんですが、それに近い事例の判例がありますんで、読んでみたいと思います。

ロックオン事件

提訴一審 平成28(ワ)5249

提訴二審 平成29(ネ)1578

反訴一審 平成28(ワ)6268

反訴二審 平成29(ネ)1579

商標と商号について参考になるのは反訴の方で、本稿では主に反訴の方を解説します。

<事案の経緯>

・株式会社ロックオンが35類の広告関係、41類のセミナー関係が指定された「LOCKON」(字体は斜体)の商標権に基づき、ケータイサイト構築アプリ「ロックオン」を提供するビジネスラリアート株式会社に対して「Lockon」や「ロックオン」の使用差し止めを求めて提訴

・ビジネスラリアート株式会社が、多少図案化された「Lock on\ロックオン」の商標権1、「Lockon\ロックオン」(二段併記)の商標権2に基づいて株式会社ロックオンによる「ロックオン」や「Lockon」関係の各種標章(後述)の使用差し止めを求めて反訴。

・株式会社ロックオンの請求は認められず、逆にビジネスラリアート株式会社の請求が一部認められる形で終結という結果。

という、藪をつついて蛇に噛まれた、みたいな結果になってしまったケースです。

商標と商号について参考になるのは株式会社ロックオンが訴えられた反訴のケースですので、以降は反訴について見ていきます。
以降、「原告」はビジネスラリアート株式会社を、「被告」は株式会社ロックオンを指します。

まずは地裁から。

<事案の概要>

・原告の商標権1は多少図案化された「Lock on\ロックオン」、商標権2は「Lockon\ロックオン」(二段併記)であり、いずれも通信や情報処理サービス関連の役務が指定されている。
・被告はマーケティングプラットフォーム事業と商流プラットフォーム事業を提供する企業、「株式会社ロックオン」である。
・被告は自社サービスに対して以下の表示を使用していた。(※すべて判決別紙より)

そして、被告の各種サービスは原告商標権の指定役務に抵触していると判断されました。
これを前提として、被告標章1~6についての判断を見ていきます。

<被告標章1について>

・被告標章1は被告の商号を赤色のゴシック体で表記したものであり,自己の商号を自社のホームページ等で着色して表示することは一般的に行われるものである。
・被告標章1のうち被告標章6に含まれる態様のものは,被告のホームページの左上に小さく標記されているにすない。
・それ以外の態様のうち,セミナーの開催告知中で表示されているものはさほど大きな表示ではない。
・被告のホームページ内の「採用情報」のページで YOU TUBE の動画に表示されるものは画面中央に目立つ態様で表示されるものの,この動画は需要者というよりは主に求職者を対象とするものであり,求職者に対して社名をアピールすることは通常行われるものである。
・したがって,被告標章1は,自己の名称を「普通に用いられる方法」により表示したものというべきである。

ということで、論点があっち行ったりこっち行ったりイマイチスパッと斬れていないと感じる文章ですが、「普通に用いられる方法」が強調されていて26条1項1号の適用が判事されています。

一番わかりやすいところは「商号を赤色のゴシック体で表記したもの」という部分でしょうか。

<被告標章2について>

被告標章1と同じような文章で、赤色が青色に変わっているだけですので、こちらも26条1項1号の適用が判事されています

<被告標章3について>

・被告標章3は,被告のホームページ中の「SOLUTION」の広告ページにおいて「デジタル戦略の総合支援パートナー」との標語の真下に表示されているものであり、被告は「SOLUTION」について被告標章3を使用していると認められる。
・被告標章3は「株式会社ロックオン」の文字に被告の登録商標である「L」字様の図形を組み合わされて表示されており、当該ページに接した需要者の注意を特に惹くような態様で表示されているから、自己の名称を「普通に用いられる方法で表示する」場合に当たるものとはいえない。

ということで、26条1項1号の適用が認められないと判断されました。
一般的な自体で記述された「株式会社ロックオン」であっても、図形と組み合わせることによって「普通に用いられる方法で表示する」場合ではなくなるという判断。

自己の登録商標と組み合わせてもダメ

という厳しい判断がされています。

<被告標章4について>

・被告の事務所の正面玄関口における被告標章4の使用は,少なくとも「AD EBiS」と「EC-CUBE」についての使用であると認められる。
・被告は,セッションにおいて,「AD EBiS」及び「THREe」について被告標章4を表示して使用していると認められる。
・被告の商号の英訳は「LOCKON CO.,LTD.」であり、「LOCKON」との被告標章4はその略称であるから、被告標章4が「自己の名称」を表示するものとはいえない。
・この略称が著名であることを認めるに足りる証拠はないから、被告標章4が「著名な略称」を普通に用いられる方法で表示する場合に当たるものともいえない。

ということで、26条1項1号の議論においてはあるあるですが、「株式会社」や「CO.,LTD.」を省くと、それは社名そのものではなく社名の略称と理解され、同号の適用には著名性が求められることになります。
結果として、「LOCKON」だけでは26条1項1号は適用されないという判断です。

<被告標章5について>

・被告のホームページのトップ画面では、他の項目において「アドエビス」及び「EC-CUBE」について広告宣伝がされており、「ブログ」のページには「EC-CUBE」に関する記事が掲載されているから、被告は、被告4サービスについて被告標章5を使用していると認めるのが相当である。
・被告標章5は、被告の商号をそのまま英訳したものではある
・トップ画面やブログに掲載された写真の上部の4分の1ないし3分の1のスペースにおいて、2行のうちの1行を占める大きさにより、需要者の目に留まりやすい位置、大きさによって表示されている。
丸みを帯びたデザイン文字から成り、特に「K」の文字には、右下部分が通常よりも長く伸びているという特徴があって、被告のホームページのトップ画面やブログに接した需要者の注意を特に惹くような態様で表示されている。
・したがって、被告標章5の使用は、殊更にその部分に需要者の注意を惹きつけることにより、役務の出所を表示させる機能を発揮させる態様での使用というべきであって、自己の名称を「普通に用いられる方法で表示する」場合に当たるものとはいえない。

ここでは適用要件として「表示スペース」「文字のデザイン」という2点が示されています。
26条1項1号の適用を受けるために「文字のデザイン」が普通の字体でなければならないというのはまぁ頷けます(とはいえ「被告標章5程度もダメなのか。。。」とは思ってしまいますが…)。
それだけでなく、表示のスペース、大きさについても厳しく判断され、大げさに違約するならば、

控えめに表示しろ

という事になるでしょうか。
少なくとも、繰り返し説示されている通り、「殊更にその部分に需要者の注意を惹きつける」のはNGということです。

<被告標章6について>

・被告標章6は、ホームページ及びパンフレットにおいて表示されている
・ホームページ及びパンフレットでは、被告4サービスの項目、説明又は広告宣伝が掲載されている。
・それらにおいて、被告標章6は、被告4サービスの出所表示として機能していると認められるから、被告は、ホームページ及びパンフレットにおいて、被告標章6を被告4サービスの広告に使用しているといえる。
・被告標章6は、ゴシック体の「株式会社ロックオン」との文字に、被告の登録商標であり企業ロゴと思われる「L」字様の図形と、被告の登録商標であり、かつ、企業理念ないし企業スローガンである「Impact On The World」との文字がバランスよく組み合わされており,外観上ひとまとまりに把握されるものである。
・このような企業ロゴ及び企業スローガンと組み合わせられることにより、「株式会社ロックオン」との文字は、それが単体で使用される場合に比べて、特に需要者の注意を惹く態様となっている。
・したがって、被告標章6の使用は、殊更にその部分に需要者の注意を惹きつけることにより、役務の出所を表示させる機能を発揮させる態様での使用というべきであって、自己の名称を「普通に用いられる方法で表示する」場合に当たるものとはいえない。

実際の判決文では一番最初に被告標章6の判断が詳しめに記述され、他の標章においてはその説明を援用する形で簡潔にまとめられている感じでした。
語らる論点は
・ウェブサイトにおいてコンテンツの配置上標章と広告とが離れていても、ウェブサイトという”ひとまとまり”の中で「使用」していると認められる。
・他社の登録商標と類似する部分が通常の字体であっても、(被告標章6のように)他のマークや標語と組み合わせられて目を引く形になっていたら、「普通に用いられる方法で表示する」態様とは認められない。
の2点です。

ということで、地裁では被告標章1,2については26条1項1号の適用によりセーフ、被告標章4~6について、26条1項1号の適用は認められずアウト、となりました。

続いて高裁

高裁では
・被告標章5についての判断の変更
・被告標章7の追加
が主な点になります。

<被告標章5についての判断の変更>

26条1項1号の適用を判断するまでもなく、「商標的な使用」ではないと判断されました。

・被告標章5は、被告ホームページのトップ画面とブログのページで掲載された社員旅行の写真に表示されているものであり、次行の被告標章5と同じ字体による「COMPANY TRIP 2016」との文字と相まって、一審被告の社員旅行の説明文としての役割を果たしていると認められる。
・被告ホームページにおける被告標章5の文字は比較的大きく、かつその字体も一般的に文章に用いられるものではないもので、特に「K」の文字には右下部分が通常よりも長く伸びているという特徴があることが認められるが、社員旅行の説明文と看取することができないというほどデザイン性の強いものとまではいえない。
・上記写真自体には被告4サービスに関連する表示はされていない。
・被告ホームページのトップ画面には「アドエビス」及び「EC-CUBE」について広告宣伝がされており、「ブログ」のページには「EC-CUBE」に関する記事が掲載されているが,同じホームページ内にある記載とはいえ、社員旅行の説明文としての具体的役割を果たしている被告標章5が、これらの役務の出所をも表示しているとはいえない。
・したがって、一審被告は、被告4サービスについて被告標章5を使用していると認めることができないというべきである。

判断が変更された大きな点は
・サービスの紹介や広告が同じウェブサイト上にあるからと言って、そのウェブサイト上の表示がなんでもかんでも商標的な使用になるわけではない。
・「K」の文字の右下部分が通常よりも長く伸びている程度では、そこを抜き出して判断できるほどデザイン性が強いとは言えない。
の2点ですかね。

というわけで、被告標章5については権利侵害の対象から外れます。

本件を読んでいて感じることの一つは、26条1項1号の適用判断と商標的な使用であるか否かの判断は、かなり近しい関係にあるということです。
逆に考えると、26条1項1号の適用を受けるためには、その使用が「商標的使用態様」ではないと判断される必要があると言えるかもしれません。
商号の使用について26条1項1号の適用が認められる要件は、その使用が商標的使用であるか否かの判断と裏表の関係にあるというイメージです。

<被告標章7について>

被告標章7の使用事実は地裁判決の後のようです。

一審被告は,被告ホームページのトップ画面の「IR情報」からリンクできる,2017年9月期第2四半期決算説明会の動画閲覧画面において,当該動画の左上部分及び当該動画の再生時に表示される「2017年9月期第2四半期決算説明資料」中に被告標章7を使用した。

そして、

・被告標章7の上記の表示形態からすると、被告標章7は被告4サービスの出所を表示していると認めることができ、一審被告は被告4サービスについて被告標章7を使用していると認められる。
・一審被告は、被告標章7は簡略化された資料の中で一審被告という法的主体を示すものであること、商品及び役務の広告宣伝ではなく、経営への貢献・関与を述べるものであることを主張するが、一審被告の商品及び役務を広告宣伝する機能を果たす被告ホームページから閲覧可能な状態にした上で、一審被告の商品及び役務に関連して表示されているといえる以上、被告標章7が一審被告の商品及び役務のために用いられていることを否定することはできないというべきである。

ということで、決算説明会用の動画と関連した表示であても、その企業が提供しているサービスに対する商標的な使用であると認められるという判断になっています。

被告標章7は「株式会社」がついてないため略称とみなされ、略称だと著名性が求められるから無理筋だと思ったのか、26条1項1号の反論はされておらず、判決文でも26条1項1号には触れられていません。

というわけで、26条1項1号に関しては被告標章5の判断において商標的な使用態様と裏表の関係にあるような判断になっていること以外、高裁で特に目立つ判断はありませんでした。

26条1項1号の適用を受けるためには

というわけで、本件訴訟で26条1項1号が適用されると判事されたのは被告標章1,2のみでした。
特徴としては
・登記と全く同じで、「株式会社」等が省略されていないこと
・一般的な自体であること
・文字色を赤や青等の1色に変更することは認められる
といった感じです。

そして、26条1項1号が認められなくなる要因として
・「株式会社」や「CO.,LTD.」が省略されていること(省略された場合は著名性が要件となる)
・マークや標語と一体に表示されていること
・字体が一般的なものでないこと
という点が挙げられます。

特に被告標章6は結構衝撃的で、「株式会社」が省略されていない表示であっても、マークや標語と一体となっていたらアウトという判断です。

被告標章5は高裁で商標的な使用ではないと判断されたので26条1項1号について判断されませんでした。
地裁では「K」の右下が伸びているからダメ、と判断されたわけですが、高裁でどう判断されるか見たかったですね。

商号の商標的使用の難点

商品やサービスをPRする際にわかりやすく「商標」として表示されるのは、まずは商品名やサービス名ですよね。
他方、社名、屋号、商号も表示されることが多いとは思いますが、その表示が商標権に基づいて禁止されるべきものか否か、つまり商標的な使用か否か、というのは割と議論になる点です。
そして自社の社名、屋号、商号の使用について商標法との関係を踏まえて意識できているかという観点では、意識できていない会社が結構あるなぁと感じます。

本件の被告も「LOCKON」について2件ほど登録商標を持っていたようですが、今回のサービスとは指定役務が違ったようですので、広い意味では「商号の使用について商標法との関係を踏まえて意識できていなかった」ということになるかと思います。

商標登録してるから大丈夫

という軽い考えだと、足元をすくわれてしまうということです。

話をそもそもの提訴に戻すと、株式会社ロックオンによる提訴は指定商品・役務が異なるという理由で退けられています。
この点からも、株式会社ロックオン側が商標登録について指定商品・役務を法に照らして正しく認識できていなかった可能性が伺えます。

本ブログで過去にバズったこの件なんか、特に指定商品・役務の不備が浮き彫りになった件ですが、こういった商標登録における指定商品・役務の不備は、弁理士が代理人として付いている以上は完全に代理人の責任です。

自分が商標登録出願の依頼を受ける際には依頼者がうんざりする程実際に提供しているサービスの内容を詳しくヒアリングして指定商品・役務を聞くんですが、依頼者が当初考えていたものとは異なる結果になることがほとんどです。
その結果として気を悪くする依頼者もいるんですが、「修正されて気を悪くするくらいなら弁理士に依頼せずに自分でやれよ」としか。

とりあえず、商標と商号についてはここまでです。

IT関係に関する指定役務の不合理について

ところで、
本件の商標権侵害に関する指定役務は
・「AD EBiS」に係る役務は、第42類の「電子計算機用プログラムの提供」
・「THREe」に係る役務は,第42類の「電子計算機用プログラムの提供」
・「SOLUTION」に係る役務は、特定の顧客向けにソフトウェアを用いたシステムを開発して提供するものといえるから、第42類の「電子計算機用プログラムの設計,作成又は保守」
という形で判断されています。

その判断の中で興味深い言及がありました。

第42類の「電子計算機用プログラムの提供」とは,コンピュータプログラマーによって設計開発されたコンピュータ用プログラムを,電気通信回線を通じて利用させる役務を含むものであると解するのが相当であり,「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」とは,コンピュータプログラマー等のソフトウェアの開発業者が電子計算機用プログラムを設計ないし作成し,又はその手直し等をする役務であると解するのが相当である。そして,第9類の「電子計算機用プログラム」がそれによって提供される目的ないし機能を問わないものであるのと同様に,第42類の役務における上記のプログラムも,その利用により達成される目的ないし機能を問わないものであると解するのが相当である。

つまり、「プログラムの機能は関係ない」と言ってるわけです。

「電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守」については、エンジニアリングそのものが提供するサービスの主体なので、機能を特定する必要はないかもしれません。
他方、「電子計算機用プログラム」「電子計算機用プログラムの提供」はどうでしょうか。
「電子計算機用プログラム」は商品としてのプログラム、「電子計算機用プログラムの提供」は、例えばウェブアプリなんかが対象になるわけですが、何の機能を実現するプログラム、アプリケーションであるかを限定せずに認めるのはちと時代遅れ過ぎないですかね。

例えば、商標「BBキング」、指定役務「電子計算機用プログラム」という商標権があったとしましょう。

そして、その商標権者は音楽関係のソフトを製造販売する会社で、DAWソフトとして「BBキング」というソフトを製造販売しているものの、音楽関係以外の分野には全く進出していないとします。

これに対して、音楽とは全く関係ないソフト、例えば会計ソフトで「BBキング」という名称のソフトを他社がリリースすると、上記商標権の侵害になるわけですね。
DAWソフト「BBキング」のユーザーからすれば、あの会社が会計ソフトなんて作るわけない、という事が明らかであるにも関わらずです。

ソフトウェアは今や社会の重要インフラで、大概のことはソフトウェアで動きます。
賛否両論あるところかと思いますが、私個人としては、社会の重要インフラであるソフトウェアの機能を特定することなく「電子計算機用プログラム」という指定商品や、「電子計算機用プログラムの提供」という指定役務の登録を認めること、分野を限定せずに「ソフトウェア全部」なんていう指定商品、指定役務が許されるのは時代遅れだと思います。

本件訴訟の場合、ビジネスラリアート株式会社が提供していた「ロックオン」はケータイサイト構築アプリであったとネット上に情報が出てきます。
これに対して、株式会社ロックオンが提供していたサービスはどうでしょうか。
判決文を引用すると、

・「AD EBiS」においては,被告の顧客がインターネットを通じて計測対象サイトを設定し,どのような効果を計測するか等を設定すると,被告が構築したシステムにより,エンドユーザーの行動に関するデータが取得,蓄積,分析され,顧客は分析結果を閲覧することができる。被告は,利用契約約款等により,対外的に,「AD EBiS」が ASP サービスである旨を説明しており,上記の処理はソフトウェア(電子計算機用プログラム)によってなされる。
・「THREe」において,被告の顧客が広告出稿に関する情報を設定すると,この情報が保管されて最適化計算が行われて運用され,顧客は,最適化や運用の結果を閲覧することができる。被告は,利用契約約款等により,対外的に,「THREe」が ASP サービスであり,「AD EBiS」のデータを活用しながら最適化を行っている旨を説明している。また,「THREe」は,「AD EBiS」等のデータを活用して,リスティング広告の出稿や入札を行うところ,被告は,ホームページ等において,入稿や入札が自動的になされる旨を説明しており,上記の処理はソフトウェアによってなされる。
・「SOLUTION」は,被告が,顧客との間で,多数の広告媒体でのデータの収集,活用のためのコンサルティングを行った上で,顧客に最適な広告戦略を策定するためのプライベートDMP(データ統合管理ツール)を「AD EBiS」等に基づいて構築し,提供するものであり,それによるデータの蓄積及び分析は,ソフトウェアによって行われるものである。

どれもこれもかなり細分化されたサービスですが、少なくとも「ケータイサイト構築アプリ」とは異なる機能です。

本件はそもそも株式会社ロックオンが誤った指定役務による商標権侵害を訴えたことが発端で、外から見る限り反訴については意趣返しの意味合いが強いように見えますんで、自業自得的な部分も多分にあるのかもしれません。
が、結論だけを客観的に見たとき、個人的には商標と商号の関係以上に、「電子計算機用プログラム」という指定商品や、「電子計算機用プログラムの提供」という指定役務の曖昧さに疑問を感じる訴訟でした。

こういった判例を教訓としてクライアントの商標を守っていきたいなと思う次第。

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