諸々の経緯を経て、我が国ではコンバースが偽物しか買えなくなってしまいました。
その諸々の経緯を名付けて「コンバース戦記」とでもします。
今回から複数回に分けてコンバース戦記を語っていきたいと思います。
が、その前に
コンバース戦記を理解するためにどうしても必要な知識がありますので、今回は序章としてその知識について語ります。
真正品の並行輸入
のオハナシです。
商標権というのはなぜ守られているかというと、そういう法律、
つまり商標法があるから商標権は守られるわけです。
そして、法律っていうのは基本的に国によって異なるものなので、
守られ方も各国の法律によって違うということになります。
絶対に商標登録が必要な登録主義の国、
登録されていなくても商標を使用して有名になっていれば守られる使用主義の国等、
ホント国によって違います。
登録主義やら使用主義やら言い出すと話がややこしくなるので置いといて、今回は商標登録を行うことを前提として話をします。
世界的に有名なブランド、沢山ありますよね。
Microsoft、Google、APPLE、SONY、
Louis Vuitton、Versace、Dolce & Gabbana
コンバース
等々
これらのブランドは世界的に商売をしているわけですが、じゃあ商標権はどうなっているかというと、基本的に国別に商標権を登録して守っているわけです。
イタリアのブランドであれば当然イタリア本国で商標登録をしていると思いますが、
世界的に商売するために世界各国で個別に商標登録をして守る必要があるのです。
で、
世界で商売をする場合、大きく分けて
1.本国の会社が現地に出向いて商売をする場合と、
2.現地の業者と代理店契約をして商売を委託する場合と、
の2種類があります。
1.の場合、本国の会社の人が現地に商品を運んで現地で売ります。
2.の場合、契約をした代理店は、本国から商品を輸入して現地で売ります。
で、
2.の場合、総代理店契約みたいな感じになると、商品の販売だけでなく現地でのブランド管理みたいなことも含めて行うこともあり、
契約をした代理店が、現地の商標権者になる場合があります。
で、現地において商標権の侵害が起これば現地の代理店が対応することになるわけです。
ここで、商標権の効力の一つに「商品の輸入を独占できる」というものがあります。
つまり、指定された商品について、登録された商標が付されている商品は、権利者以外勝手に輸入しちゃいけない、ということです。
ここで問題となるのが、本物を輸入する場合。
現地代理店としては、契約したブランドの輸入経路を独占したいので、他の業者が本国から直接ブランドの商品を仕入れて現地で売ると面白くないです。
なので、商標権に基づいて差し止め請求を行ったりします。
本物だろうが偽物だろうが、商標権の効力として「輸入を独占できる」と書いてある以上、法律的には間違った行為ではない、というのが原則論です。
でも、やっぱ違和感ありますよね?
本物なわけだし。
で、それについて争われた事件が平成15年2月27日判決のいわゆる「フレッドペリー事件」です。
裁判の詳しい内容については割愛しますが、日本の代理店を介さずに本国から直接商品を輸入する業者が、商標権侵害ということで日本の代理店から訴えられた事件です。
「本物ならおk」という判決です。
あぁよかった。
但し、この「本物」ということを判断するために以下のような条件が提示されました。
・商品に付いてる商標が、輸入先の国の商標権者によって付されたものであること。
→つまり、輸入先の国において適法な商品だってことです。当然です。
・輸入先の商標権者と、日本国内の商標権者とが同一であるか、若しくは法律的、経済的に同一であるとみなせる関係にあること。
→つまり、
本国の会社が日本で商売しているか、
本国の会社の日本法人か、
本国の会社と代理店契約を結んだ業者であるか
のどれかに当てはまることで、趣旨はわかるものの、なんとなく言葉足らずな条件だなぁと思っていたら、案の定コンバース事件の火種となってしまいました。
・日本国内商標権者が、本国の商品の品質を直接的、間接的に管理できる状態にあり、日本国内の商標権者が保証している品質と本国の商品の品質とに実質的に差異がないこと。
→例えば、大元が同じブランドの元でモノを作っていたとしても、各国別々にモノを作っているために、国内の商標権者が考えているブランドイメージとは異なるものが外国で作られているような場合に、それはNG。みたいな感じです。
まぁ、こんな感じで商標法的に「本物」であることを認めるための条件が最高裁で出されたので、それ以降はこの条件に則って
真正品の並行輸入
が判断されていくわけです。
この最高裁判決が出されたとき、ブランドを愛し、育てたファンの気持ちが踏みにじられる事態が発生すると予想できた人はどれだけいたのでしょうか。
私はこの判決の勉強をしたとき、
「ここがオカシイ!」
と明確に指摘できたわけではないのですが、2つ目、3つ目の条件についてなんとなく違和感を感じたのです。かといって1つ目の条件だけでは、別々の国において別々に育ったブランドの商標がたまたま似ていた場合に難しいことになってしまいます。
司法というものの難しさを実感できる裁判ではないかと。
というわけで、序章がかなり長くなってしまいましたが、次回は
【コンバース戦記】#1-第1章-コンバースの歴史
を書きます。
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