アナログゲームの知財について考える

アナログゲームが大好きです。

カードをめくる瞬間、コマを動かす瞬間、
テレビゲームも好きですが、アナログゲームにはテレビゲームには無い良さがありますね。

例えば、スコットランドヤード
ババ抜きのババのようなミスターXカードをめぐって参加者の駆け引きや疑心暗鬼が繰り広げられるエキサイティングなゲームです。

そして、戦国時代
シンプルなルールながら、「賽を振る」事の興奮を最大限に楽しむことができます。

※この二つを例として挙げたのには理由があります。できればリンク先のページを見て、それぞれどんなゲームか把握して頂けると。

他にも、色々と楽しいアナログゲームが世の中にはたくさん。

アナログゲームではなくデジタルのゲームですが、私のクライアントにもゲームを作っている会社はあります。

つまり、パクる側にもパクられる側にもなり得る。

ということで、アナログゲームの知財について考えてみたいと思います。

1.「ゲームのルール」は著作物としては守られない。

ゲームと知財という観点ではまず著作権が思い浮かぶかもしれません。
が、「ゲームのルール」って、まさに「人為的な取り決め」ですよね。
つまり、「表現されたもの」ではないために著作物ではないというのは教科書レベルの話です。

つまり、私がスコットランドヤードと同じルールのカードゲームを製造・販売することは著作権の侵害にはならないということです。

これが「アナログゲームの知財を考える」という事の出発点。

はたして、ゲームクリエイターによるゲームデザイン自体は他社によってパクられ放題なのか?

2.著作物として認められる部分もある?

上で紹介したスコットランドヤードや戦国時代をはじめ、アナログゲームにはカード、フィギュア、ゲームシート等のコンポーネントが含まれます。

これらの絵柄や造形は当然「表現されたもの」ですので、創作性を満たす限りにおいては著作物として認められます。

従って、同ルールのゲームを製造・販売することを直接禁止することはできずとも、カードやフィギュアをコピーしているのであれば、そのコピーを禁止することは可能です。

しかし、カードの絵柄やフィギュアの形状を新たにデザインされてしまえばそれも無理。

3.商標法は?

「スコットランドヤード」「戦国時代」といった言葉を商標登録することは可能です。

指定商品は、28類 カードゲーム,ゲームおもちゃ,ゲーム盤,ボードゲーム

といったところですかね。

でもこれは商標法ですから、同様の商品名を使う事を禁止することができるというだけ。

たとえば、「スコットランドヤード」という登録商標があったとしても、まったく同じ内容のゲームを「東京警視庁」という商品名で製造・販売することは禁止できません。

また、「あのスコットランドヤードと同様のゲーム内容!」「スコットランドヤードの発展版!」みたいな言葉を商品パッケージに掲載しても、商標権の効果の及ばない範囲としてセーフでしょう。

更に言えば、
ゲームがそのルールと共に多くの人に認知され、「スコットランドヤードというカードゲームと言えば、あんな感じのルールのゲーム」という事が有名になったとします。

そうすると、「スコットランドヤード」という登録商標があったとしても、その商標はそのゲームの内容を説明する言葉であるという判断となり、同様のルールのカードゲームを「スコットランドヤード」という商品名で製造・販売することは商標権の効果の及ばない範囲となる事態も考えられます。

4.意匠権

著作権の場合と同様、カード、フィギュア、ゲームシート等のコンポーネントを意匠登録して守る事も考えられますが、コンポーネントのデザインを変えられてしまえば無意味なのも同様。

どうせ登録するのであれば更新可能な商標登録の方がいいかもしれません。

5.不正競争防止法

ゲームのルールも含めたゲームデザインを直接守ることについては今のところ望みが薄そうですですが、なんとか守れないものか。

今度は不正競争防止法から考えてみます。

まずは、「商品等表示」

第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
一 他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為
二 自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為

商標法において「ゲームのルール」「ゲームデザイン」は商標としては認められないですが、不正競争防止法上の「商品等表示」であればどうでしょう。
条文には「その他の商品又は営業を表示するもの」という部分があるので、完全な無理筋ではないはず。

が、一筋縄ではいかない難しい判断であることは確かですね。
少なくとも、その「ゲームのルール」が、そのゲームを製造・販売しているメーカーのものとして有名となり、同様のルールのゲームを他者が製造・販売したら「これって、”あのメーカーの”あのゲームのパクリじゃね?」と思う人が大勢いる状況でないと認められる事はないでしょう。

次に「商品形態」

第二条 この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
・・・
三 他人の商品の形態(当該商品の機能を確保するために不可欠な形態を除く。)を模倣した商品を譲渡し、貸し渡し、譲渡若しくは貸渡しのために展示し、輸出し、又は輸入する行為

これはハッキリいって上の「商品等表示」よりも難しいのが現状だと思います。

逐条解説 不正競争防止法 Chapter 3 不正競争(第2条関係)

また,「商品の形態」には,単なる商品のアイデアや,外観の態様に影響を与えない商品の機能それ自体は含まれない

「外観の態様」という言葉が出ているので、この条文で想定されている「商品の形態」とは目に見えるカタチであって、ゲームデザインみたいなものは想定されていないのでしょうね。

不正競争行為は時代に沿って条文が改正され、規定が追加されていってます。
最近も「限定提供データ」という名目で、営業秘密ではなくとも特定のデータが守られるという規定が追加されたばかり。
ゲームデザインについても不正競争防止法によって保護するように法改正することは一考の価値があるのではないでしょうか。

6.一般不法行為

現状、これが一番可能性が高い、というか、ゲームデザインに関して特別に適用できる条文がないので一般法で守るしかないという状況と言った方が正しいでしょうか。

参考になる判例は翼システム事件

民法709条にいう不法行為の成立要件としての権利侵害は,必ずしも厳密な法律上の具体的権利の侵害であることを要せず,法的保護に値する利益の侵害をもって足りるというべきである。そして,人が費用や労力をかけて情報を収集,整理することで,データベースを作成し,そのデータベースを製造販売することで営業活動を行っている場合において,そのデータベースのデータを複製して作成したデータベースを,その者の販売地域と競合する地域において販売する行為は,公正かつ自由な競争原理によって成り立つ取引社会において,著しく不公正な手段を用いて他人の法的保護に値する営業活動上の利益を侵害するものとして,不法行為を構成する場合があるというべきである。

ここで言われている「データベース」は、裁判の中で「創作的なものではなく著作物ではない」という判断がされていますが、著作権侵害ではなくともそれをパクって売るのは不法行為だと判断されたところが画期的なところです。しかし地裁判決というのが今一つ心許ない。せめて高裁判決として欲しかったですね。

この判例から考えれば、ゲームデザインをパクる行為に関しても不法行為として認められる可能性はありそうです。

しかし、その上で問題となってくるのはやはり「ゲームデザイン」の内容でしょう。
「公正かつ自由な競争原理に反する」との判断を得るためには、ある程度作り込まれた「ゲームデザイン」である必要があるかと思います。極端な話、ジャンケンのようなシンプルなゲームのルールを保護しろっていうのはどう考えても不合理です。

これは、一般不法行為に限った話ではなく、例えば「ゲームデザイン」が著作物として認められる方向で著作権法が改正された場合でも、同じく不正競争防止法によって守られる方向で不正競争防止法が改正された場合でも同様。
あまりにも単純なゲームのルールが法律によって保護されるのは合理的ではありません。

ここで、最初に紹介した2つのゲームの内容です。

私見ですが、

・スコットランドヤードのゲームデザインは細部まで細かく設定されているので法律によって保護されるべき
・戦国時代のゲームデザインはシンプルなので広く万人による利用が許されるべき

と思います。

ただ、あくまでもこれは私の私見。
「戦国時代のルールだって保護されてしかるべきだ!」と思う人もいるでしょうし、「スコットランドヤードのルールだって誰でも利用していいはずだ!」と思う人もいるでしょう。

こういった保護範囲への線引きが難しいことが、そのまま「ゲームデザイン」を特別法で保護する事に対する難しさですね。

仮にゲームデザインが特別法での保護対象となれば、ゲームを作る側としてはよりシンプルなルールに関しても自社の権利として主張したい反面、他社のゲームのパクリと言われないようにゲームデザインの選択の幅が狭まってしまう。
その結果がゲーム産業にとってプラスとなるのかマイナスとなるのか。。。
知財政策は産業政策としての面が強いので、ゲーム産業にとってプラスとなる政策を選択しなくてはいけません。

「ソフトウェア」が特許の対象であるとなって久しいですが、その結果はどうでしょうか。
本当に特許によって保護されるべき「ソフトウェア」なのか、それとも単なる「人為的取り決め」なのか怪しい特許があふれ、判例として表には出てこない「企業間のやりとり」において、そんな眉唾特許が猛威を振るっている、のかもしれません。

そう考えると、「これは保護されてしかるべきだ!」という強い思いを託せる「ゲームデザイン」が一般不法行為と言うハードルの高いフィールドでのみ守られる(可能性がある)という現状はバランスが取れていると言えるのかもしれませんね。

なんにせよ、これからも多くのアナログゲームを楽しんでいきたいです。

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