画面デザインの知財について色々考える ~著作権法における「創作性」と、意匠法における「創作非容易性」に違いはあるのか?~

意匠法が改正されまして、それまでは何らかの「物品」を指定しなければ登録されなかったものが、「画像」という形で登録されるようになりました。

それ以前も「画像」を意匠登録する道筋は存在したんですが、「DVDプレーヤー」みたいな具体的な機器を「物品」として特定した上で、その機器によって表示される画像を登録対象の「部分」として指定するという形でした。
また、パソコンやスマホのような電子機器は機能が多岐にわたるため「物品」の特定として不十分だという趣旨で、「~機能付き電子計算機」のように機能を具体的に特定する形になっていました。

従来のこのような制約のうち機器を指定する部分が緩和され、「画像」でも登録されるようになりましたが、機能を具体的に特定する部分は残り、結果的に「~機能付き画像」のように物品を指定して出願する形になりました。

で、もっとも気になる点は、

どのくらい似てたら侵害になるのか?

という事なんですが、こればっかりは制度が施行された後、判例が蓄積されて初めて見えてくる部分なのでわかりません。

また、画面デザインという事になれば、対象を操作するために必然的に決まってくる部分もあるわけで、そういった部分は独占不可能というのは制度の建前のはずなんですが、特許庁のデータベースで既存の意匠登録を検索してみると、

「これのどこにデザイン性があるわけ?この画面配置は独占されちゃってるわけ?」

と言いたくなる登録がチラホラ、というかわんさか。
これから先、画面デザインの意匠権侵害に関しては色々と揉めるんじゃないかなぁ、と思っています。

で、そんなもめ事の末に、「どのくらい似てたら侵害になるのか?」「画面デザインとして似てても許される範囲はどこまでか?」といった疑問が解消されていくんだと思いますが、ただ座して待つというわけにもいきません。

画面デザインの著作権判例を検討してみる

で、現状で判例を漁れるとすれば意匠法が改正される前、まだ機器を特定しない画面デザインを守る方法として著作権しかなった時代の判例です。
検索すれば色々と出てくるのですが、

「画面デザインにおける入力欄や表示欄の配置は独占なんかさせねぇよ?」

という趣旨の判例がありまして、高裁までいっているので、その結論にはある程度信頼感を感じています。

東京地裁 平成15年(ワ)第15478号

原告、被告は共にIT系の会社で、被告が販売するソフトの画面デザインが原告が制作したソフトの画面デザインの著作権を侵害するとして使用差し止め、損害賠償を請求した事件です。

前提事実

H10 原告が「ProLesWeb」(原告ソフト)の製造販売を開始。

H12/10/6 被告が原告との間で原告ソフトに「Webcel」という商標を付して販売する旨のOEM契約を締結。

H14/10/5 上記OEM契約が終了。その後、被告がかねてより開発に着手していた「Webcel 3」を販売。
同年11/19 「Webcel 3」に更に改良を加えた被告ソフトの販売を開始。

原告ソフトはMicrosoft Excelを介して入力作業を行い、インターネット上にデータベースを公開したり利用したりするもの。
被告ソフトも原告ソフトと同様の機能を有する。

原告ソフト及び被告ソフトの画面表示は判例添付資料の通り。
画面自体はよく似てまして、まぁほとんど同じと言ってもよいかと。

という事で、被告ソフトの画面が、原告ソフトの複製物または翻案物であるかという点が争点。

創作性全否定

リンク先別紙2の本体画面の上段中央~右側を占めるツリー上の表示部分については、以下のように否定。

デバイス,フォルダ,ファイル等をその名称によってツリー状に表示することは標準的に行われている表示方法であるから,原告ソフトウェアにおいて作成するレポートやレコードの名称をツリー状に表示することに表現の創作性は認められない。

本体画面左側の機能ボタンの表示については、以下のように否定。

頻繁に用いられる機能に独立のボタンを割り当てることは通常行われることであり,アイコンの形状及び配列についても特徴はなく,表現の創作性は認められない。

本体画面中段のデータがプレビュー表示された感じの部分については、以下のように否定。

複数の項目からなるデータを表形式で表示することは普通に行われることであって,表現上の工夫は認められない。また,各項目の属性を表示する点も,原告ソフトウェアがエクセルのひな型のセルとデータベースのデータの項目とを対応させてデータの追加,修正,削除,書出しを行うものであることからすれば,これらの機能を実現する上で必要となる情報を表示しているにすぎず,表示する情報の選択,表示方法等もありふれたものといえる。

それらの配置については、以下のように否定。

画面の縦横の比率などに由来する制約があって選択の余地は限られており,配置において,創作性があると認めることはできない。また,原告本体画面の全体の外観(色彩及び各表示部分の相互の配置を含む。)も,創作的な特徴を有するとは認められない。

別紙3のレポート等自動作成画面については、以下のように否定。

原告レポート等自動作成画面上部の「ひな型シートからレポートとテーブルを作成します。」との説明文言は,原告ソフトウェアにおけるエクセルのひな型からレポート及びテーブルを作成するという手順を,ごく普通に表現したものといえる。また,その他の説明文言も,原告ソフトウェアの機能ないし操作手順を普通に表現したものといえる。また,レポート名及びテーブル名を表示する枠も,レポート及びテーブルの名称の表示方法としてはありふれたものである。したがって,上記説明文言等は,原告ソフトウェアの機能ないし操作手順を普通に表現したものであるから,創作的な表現とは認められない。
また,原告レポート等自動作成画面の全体の外観(色彩及び各表示部分の相互の配置を含む。)も,創作的な特徴を有するとは認められない。

別紙4のひな型設定画面については、以下のように否定。

同画面における,ひな型に対応するレポート及びテーブルの名称を表示する欄は,ひな型とレポート及びテーブルの対応を表示するものであって,上記のデータ書出し機能に当然必要とされる項目を普通に表現したものといえる。また,ひな型のタイプ,エクセルへの書出し等の指定,書出し行の選択,「テーブル1レコードの読書範囲」の設定等,上記書出しを実行する場合の条件を設定するための表示は,原告ソフトウェアに備わった書出し機能に従って決められた条件を,普通に表現したものといえる。また,「取込」ボタン,「中止」又は「選択」ボタンの表示も,必要な機能をボタンに割り当てることは通常行われており,その表示も,ごくありふれたものであって,表現の創作性はない。さらに,原告ひな型設定画面全体の外観(色彩及び各表示の相互の配置を含む。)も,創作的な特徴を有するとは認められない。

別紙5のひな型自動作成画面については、以下のように否定。

同画面における「一覧表タイプひな型シートの作成とセル位置の設定」との表題は,原告一覧表ひな型自動作成画面において行う作業をそのまま表現したものにすぎず,創作性を認める余地はない。同画面における,作成先及び書込位置の設定欄,「テーブルの列」及び「Excelの書込列」の欄の各表示は,一覧表タイプひな型シートを作成する場合の設定項目をそのまま普通に表現したものであり,創作的な表現とは認められない。同画面における,エクセルに書き込む列と書き込まない列とを選別するための緑色のボタンの表示部分は,選別項目を左右の枠に表示してその間に「→」等のボタンを置き,選別を行うことがウィンドウズ等のコンピュータにおいて慣用的に行われていることからすれば,上記のような選択のための表示方法はありふれたものであるし,ボタンの形状,色も創作的なものとはいえない。同画面における「列順番入替」の文字と列の順番を入れ替えるためのオレンジ色のボタンの表示についても,列の順番入替えを行う場合の慣用的な表示であって,ボタンの形状及び色彩についても,上記と同様に,創作的なものとはいえない。また,以上の各表示を同一の画面上に表示する場合には,その配置は自ずから限られたものとなるのであって,原告一覧表ひな型自動作成画面における配置が創作的なものとはいいがたい。

その他の特徴についても以下のようにバッサリ。

原告は,原告各画面表示に関して,簡単なマウス操作でデータベースとエクセルとを連携させて情報処理をすることに創作的な特徴があるとも主張する。しかし,このような原告ソフトウェアにおける機能面での特徴が,原告各画面表示における創作性の有無に影響を与えることは,特段の事情のない限り,肯定することはできない。特段の事情の認められない本件において,原告の同主張を採用することはできない。

知財高裁 平成17年(ネ)第10055号

高裁でもバッサリ。

ハッキリ言って「こんな短い高裁判決初めて見た!」というくらい短い判決文でしたが、以下のようにバッサリです。

当審において控訴人が強調するところは,原告ソフトウェアにおいて想定されるユーザー,価格帯,使用目的,使用頻度,使用されるハードウェアのスペック等を前提にして,各構成要素の選択と配列,各画面表示の選択と配列,各画面表示相互の牽連性を重視して,原告ソフトウェアの創作性を判断すべきであるというにあるが,著作物性を認めるに足りる創作性を肯定すべき表現内容が,原判決が上記判断において前提とした各画面の表示内容等を超えて,原告各画面表示にあるものと認めることはできない。

著作権法における創作性と、意匠法3条2項の創作非容易性との違いは?

ということで、こういったソフトウェアやウェブサイト等の画面デザインにおいて、入力欄や表示蘭の配置が一致している事のみでは権利主張は難しいという結果なのですが、その道筋は「創作性の否定」、すなわち「そもそも著作物ではなく、権利が無い」というものです。

これを意匠法に投影してみるとどうでしょう?
著作権法で言うところの「創作性」を意匠法に投影した場合に考えるべきは、3条関係、特に2項に規定される「創作非容易性」という事になると思います。

第三条 工業上利用することができる意匠の創作をした者は、次に掲げる意匠を除き、その意匠について意匠登録を受けることができる。
一 意匠登録出願前に日本国内又は外国において公然知られた意匠
二 意匠登録出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた意匠
三 前二号に掲げる意匠に類似する意匠
2 意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となつた形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、その意匠(前項各号に掲げるものを除く。)については、同項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。

そして、登録意匠の場合は(司法判断ではないものの)、少なくとも特許庁による審査を経て、意匠法3条2項に規定される「創作非容易性」をクリアしているという建前があります。

従って、意匠権に基づく差し止め請求や損害賠償請求に対抗する際に、上記の判例のような「創作性がない」という反論と同趣旨の反論をする場合には、特許庁による「創作非容易性あり」という審査結果を覆すことになるわけです。

ここで先ほども書きましたが、既存の

「これのどこにデザイン性があるわけ?この画面配置は独占されちゃってるわけ?」

と思われる登録の数々。
上記判例に照らせば、少なくとも著作権法に言うところの「創作性」があるとは思えないものがまぁたくさん。

仮に、意匠法における「創作非容易性」のハードルが著作権法に言うところの「創作性」よりも低く、既存の登録には何も問題がないという事であれば、上記判例のように著作権法では自由なデザイン活動の範囲であるとされた画面デザインにおける入力欄や表示欄、各種機能に対応したボタン等のインターフェースの配置について意匠権による独占が認められ、早い者勝ちの世界になってしまいます。
それを「~機能付き」のように対象となる画面が機能的に限定されているから社会的な影響は少ないと見る考えもあるでしょうが、個人的にはそれが「産業の発達に寄与」するとは思えません。

既存の「画像を含む」意匠登録に無効の嵐が吹き荒れることになるのでしょうか。

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