「弁理士ドラマ」として面白いと思う脚本を考えてみる

初の弁理士ドラマとして(こちらの業界では)鳴り物入りで始まったドラマが、ドラマとしては面白いレベルなんでしょうけど、「弁理士ドラマ」としては少々期待外れだったので、「弁理士ドラマ」として面白いと思う脚本を自分で考えてみようと思った次第。

設定

弁理士A:主人公、アベンジャーズ①、30歳前後、男、専門は情報処理だが物理科出身で大概の技術に通ずる。ただし化学、薬学、バイオはからっきし。
大手特許事務所に所属していたが上司と揉めて退職し、なんのツテもなく個人の弁理士としてやり始める。

弁理士B:50代中盤、男、Aが所属していた事務所での上司。無能なくせに偉そうな老害。自分のメンツを潰したAを目の敵にする。

エンジニアC:20代、男、変人の天才プログラマーにしてベンチャー企業を立ち上げた若手社長。だが社長であることは隠している。

男性D:30代、男、Cの会社の事務員。変人の社長に振り回されいつもオロオロしている。

弁理士E:50代後半、男、Aが所属していた事務所の代表。

事務員F:ショートカットでキリッとした目つきながらも柔らかい雰囲気を携えた美女。Aが所属していた事務所で事務員をしていたが事務所を飛び出したAの個人事務所に押しかける。
ヲタクで元デザイナー、自分のデザインを盗作された上、パクった側にされたという辛い過去を持ち、そこで興味を持って知財の業界に身をおくようになった。実は弁理士試験の勉強をしており、後に意匠・著作権を専門とするデザイナー弁理士にクラスチェンジし、アベンジャーズ⑤となる。

弁理士G:アベンジャーズ②、Fの知り合いでAよりも数年先輩、男、専門はAが苦手とする化学、薬学、バイオ等の分野だが、それに加えてAには無い顔の広さ、特に弁理士会中央における人脈を持つ。内心では見下す老害ともうまく付き合い、弁理士会の常議員も務める、

弁理士H:アベンジャーズ③、商標専門の女性弁理士、商標ブローカーをはじめとして、商標制度を言葉狩りの道具にする輩に並々ならぬ憎しみを抱く。小僧寿し事件(をモデルにした商標事件)の原告側の娘。事件の後(中学生くらいの頃?)に親の店は潰れて辛い経験をした半面、親の行為(訴えを起こしたこと)には今でも賛同しておらず、複雑な想いを抱えている。

弁理士I:アベンジャーズ④、弁護士弁理士、30代、男、A程ではないが苦手分野なく技術全般に知識を有する理系弁護士で弁理士登録もしている。理系の学生時代に特許に触れて興味を持ち、まだよく知らないうちから大は小を兼ねるという軽い気持ちで弁理士ではなく弁護士を目指して難なく司法試験に合格した秀才。

脚本プロット

<アバン>
・特許の打ち合わせのシーン
・弁理士A、Bが並んで座っている。
・エンジニアCが立ってホワイトボードとプロジェクタを駆使し、専門用語の連発でウェブサービスの技術説明をしている。
・AはCの話を面白そうに聞いているが、Bはつまらなそうで偉そうな態度。
・A、Bの向かいにはCの会社の事務方と思しき気弱そうな男性DがBに気を使う様子でオロオロしている。
・Cが説明を終え、「以上です。何か質問は?」と言うと、Bは偉そうに「じゃあ、今の説明、全部書面にして提出して下さい」と言い、AとCはその言葉に唖然とする。
・Aがしびれを切らし、「いや、よくわかりましたんで書面は結構です。それよりも、、」とCと同レベルの専門用語で質問を繰り出し、Bを置き去りにしてAとCは技術の話で盛り上がる。
・Bはいかにも不愉快そう、Dはそれを見て余計にオロオロする。

後日
・A、Bの事務所の所長室にて、偉そうな椅子に座る所長弁理士Eの前にA、Bが立ち、BがAの行動を問題行動としてEに報告している。
・なんやかんやとそれらしい理由をつけているが、Bは先日のCとの打ち合わせでメンツを潰された意趣返しにAに謝らせたいだけ。
・面倒くさそうにしていたAだが、ため息一つの後、「今日で辞めます」
・事務員Fが、ガラス張りの所長室のガラス越しにその様子を心配そうな眼差しで横目で見ている。

後日
・古い雑居ビルの一室のドアの前に木でできた「~弁理士事務所」という看板を掛け、室内に入るA
・室内は昭和の探偵ドラマの事務所のような様相で、ひと目で自宅を兼ねていることがわかる生活感。
・室内ではFがコーヒーを淹れているが、1杯だけ淹れたコーヒーを自分のデスクに持っていって自分で飲む。
・Aは「あれ、俺のコーヒーは?」と聞くが、Fは「給料払ってないくせに贅沢言ってんじゃないわよ」と軽くいなす。A「いや、態度変わりすぎじゃない?事務所にいたころは『A先生ぇ~』なんつって、敬語だったのに。」 F「そりゃ給料もらってる事務所の弁理士には先生つけて敬語も使うわよ。先生って呼んで敬語も使ってほしけりゃちゃんと給料払ってみなさい。」 A「給料いらないから手伝わせろって押しかけてきたのにはそっちだろ~」 といった状況説明の会話。
・そこに、ドアをノックする音がして「失礼しま~す」と人が入ってくる。
・入ってきたのは先日打ち合わせをしていたエンジニアC。

アバンここまで。
テーマ曲はUNISON SQUARE GARDEN、っていうか「シュガーソングとビターステップ」
アバン後のタイトル画面ではイントロのチャッ♪チャッ♪チャッ♪まで。

<Aパート>
・FがCにコーヒーを出し、Aが何か言いたげにする。
・Cの話は
 先日の打ち合わせの特許は代理人Bで出願された
 意図した技術事項はまったく記述されず、「こんなこといいな、できたらいいな」という願望が記載されただけの、技術的に無意味な出願
 社としてはちゃんとした技術内容で出願したい
 というもの
・既にBの代理で出願されたものは技術事項こそ不十分だが、その技術事項の前提となる課題や得られるべき結果については書かれている(ただしBが書いたわけではなくCが提出した資料による)。
・AはCとの盛り上がった打ち合わせを思い出し、そのCが自分を頼ってきてくれたことの嬉しさのあまり「なんとかします」と言ってしまうが、頭を抱える。
・Fは「あんなこと言っちゃって、どうするんですか?前の事務所と揉めるつもり?」と相変わらず嫌味な態度を取りつつ、Aに黙ってある人に相談を持ちかける。

<Bパート>
・Fが知り合いの別の弁理士Gと会って話している。内容は、Aの状況を伝えつつ打開策の案を求めるもの。
・Aならば技術的には問題ないが、問題は既に出されている出願との関係、そして前事務所との関係が問題であることを話す。
・FとGとが連れ立ってAの事務所(兼自宅)に来ると、AとCが激しく言い争っていて、それをDがオロオロしながら観ている。
・言い争いの内容は例の特許出願の技術について、なんとテストコードではなく実装中のサーバーのコードを直接いじりながら言い争っていて、それについてもDがヒヤヒヤしている。
・高度に技術的な内容についてCと対等に言い争うAの姿を見てGは忘れていた技術への情熱を思い出す。
・GはAに対して「打ち合わせ中の技術については打ち合わせをまとめて新規に出願すればいいこと。既に出されてしまった出願についてはAが特別授権の委任状を受けて取り下げ処理をすること」を伝える。
・「そんなことしたら前事務所が、、、」と躊躇するAに対し、Gは「出願人の意思よりも尊重されるべきことなど無い」と言い切り、「失礼する」と言って事務所を後にする。
・GがAの事務所を出て扉を閉めると、すぐにAとCがまた言い争う声が聞こえ始め、Gは一瞬微笑んだあと鋭い表情になって歩き始める。

弁理士会館
・おじいさんばかりの会議が終わってEが出てきたところをGが呼び止める。ある程度の知り合いのようである。
・Aが辞めたことやBとの間に確執を抱えていることが噂として聞こえてえきていることを伝えた上で、大手事務所が若手弁理士の個人事務所に目くじらを立てたり等しないですよね、ということをGらしい大人の対応で伝え、立ち去る。
・Eは立ち去るGを無表情で見ている。

<Cパート>
・B、Eの事務所にて、Cの出願が新たに代理人となったAによって取り下げ処理されたことが判明し、Bが部下にキレ散らかしている。
・Bは部下に指示し、Cの会社への抗議、Aの仕事の妨害などを命令する。
・その様子をEは無表情に見ている。

Aの事務所
・Aが打ち合わせにいく準備をしている。Cとは別の独立後初めて入った仕事の打ち合わせで、Fが嫌味半分激励半分で送り出そうとするところに電話が鳴る。
・Fが電話に出るが、出ようとするAをFが手で呼び止める。
・電話を切ったFが仕事がキャンセルになったことをAに告げる。
・そこにGが入ってきて、Fから事情を聞く。
・FがGに話しているときに、Aが大声を上げる
・Aの事務所の悪評がSNSに書き込まれている。
・Gは渉外的なことは当面自分に任せるように言いつつ、Cの出願はどうなったのか聞く。
・Aは、技術理解の点では納得してもらっているが、最終的な出願内容の方針でまだCと合意できていない事を伝え、特許の書き方の面はこっちに任せてもらわないと、、、という愚痴をこぼす。
・Gは、技術を理解した上でクライアントにとって最も良い特許の方針を立てるのは当然だが、それを理解してもらうところまでが仕事であることをAに説き、自分はやることがあると事務所を出ていく。
・Gが事務所を出ると、AがおそらくCであろう相手と電話を始め、また前と同様に激論が始まる声が聞こえる。Gは前と同じように一瞬微笑んだあと、表情を改めて歩きだす。

※ここでラストに繋がるテーマソングスタート

・Aは自分の理解や主張を伝えることではなく、Cにとってのメリットを伝えることに重きをおいて説明をする。次第にCの態度は変わっていき、内容の合意に近づく。
※ここまででAメロ前半「見失えないものは何だ?」
・Gは弁理士会館に入っていき、弁理士会の年寄りの多い会議に出席する。メンバーにはEもいる。
・Gは会議の終盤で他の会員(弁理士)に対する営業上の妨害行為を議題にあげる。会議メンバーの大半に対するGによる根回しは既に済んでおり、悪質な妨害行為を積極的に綱紀にかけていくことを確認する。会議メンバーの拍手の中、GはEに視線を向ける。
※ここまででBメロ+サビの半分「目が回りそうです」

・Eの事務所にて、Bが所長室に呼び出され、一切の妨害行為をやめること、Aへの依頼を撤回させた企業にはAの依頼を復活させるよう働きかけること、今回の妨害行為が明るみに出たらクビであることを伝える。Bは苦虫を噛み潰したような顔。
※ここまでで1コーラス終わり。Bの顔に合わせて「リフレクト!」

<エピローグ>
・H、Iそれぞれのキャラクターを示す1シーン。
・Fが弁理士試験の勉強をしているシーン。
※ここまでで間奏

・Aの事務所にて、Cが嬉しそうに話している。出願が完了した書類を片手に、内容の良さを褒めている。
・Aが、そもそもなんでCの会社から特別授権の委任状がもらえたのかを尋ねると、Cは自分が社長であることを明かし、AとFが声を揃えて驚く。
・そこにGが大荷物を持って入ってくる。「今日から私もここで働きます。机は、ここを使わせてもらいますよ。これ、私のマグカップ、流し台の方に置かせてもらいますね。」
・Aが給料なんて払えないと言うと、Gは「自分の給料は自分で稼ぎます。私はあなたと違ってしっかりクライアントに了解をとってここに来ているのでご心配なく。逆に、ここの家賃を払ってさしあげますよ。」と言い放つ。
・そこでCが、ここのビルをCの会社で買ったので家賃は払わなくていいことを伝え、AとFが再び声を揃えて驚く。
・Gは、「間借りすることには変わりはないので、間借り分の家賃は払います」と伝え、Fは「じゃあとりあえず私の当面の給料はその家賃分でいいわよ」 Aは、「最初の固定収入が家賃収入の弁理士ってなんだよ。。。しかも自分には一文も入らないし。。。」と自嘲する。
・Fが来客(Cのため)用の紙カップ、自分のマグカップ、Gが置いたマグカップにコーヒーを淹れたあと、少し考えてAのマグカップにもコーヒーを淹れるシーンで終わり。

<以降の展開>
・Cのサービスの機能拡大や新たな依頼者の登場に従って、G、H、Iがそれぞれが主人公となる回を経てH、IもAの事務所に入る。
・Cのサービスのデザインが問題になったところでFが密かに弁理士試験に合格して登録前研修を受けていたことを明かし、デザイン専門の弁理士として再加入する。
・5人が揃ったところで、E事務所が関与する大企業によるCのサービスの買収提案、それが断られると類似サービスによる競合妨害が始まり、5人がそれぞれの専門分野で立ち向かう。

こんなのが観たかった。

ってか、「弁理士ドラマ」の主人公弁理士がなんでインハウスなんだよ。。。

「個性」の合う弁理士がきっと見つかる。 弁理士事務所Shared Partners

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