米国最高裁判決、グーグルvオラクル Java訴訟 ~その3.著作物の性質~

~その1.結論とシラバス~
~その2.技術的事項の説明~
の続きです。

フェアユースの判断要素、
(1)使用の目的と性質
(2)著作物の性質
(3)著作物全体に関連して使用される部分の量と実質性
(4)著作物の潜在的な市場または価値に対する使用の影響
についての判決文での説明を観ていきます。

判決文の順番に沿って、まずは「著作物の性質」から。
判決文では、P25からです。
判決文(の独自訳)を引用しながら説明しますが、引用部分を読まなくても趣旨がわかるように簡単に解説を入れてあるつもりです。

まず、Googleが複製した「宣言コード」についての説明がなされます。
~その2.技術的事項の説明~でも説明された、「java.lang.Math.max」といった具体的なメソッドコールも引用され、コンピューターを動作させるプログラムをそれぞれの機能によって分類、整理するための「アイデア」に関連するものであることが説明されます。

それは一般的なシステム、コンピューティングタスクの一部と密接に結びついており、それらは著作権の適切な対象だとはみなされない。それはタスクをcabinets, drawers, and files,と呼ばれるものに整理するというアイデアと密接に結びついており、このアイデアも著作権の対象外である。それは、java.lang.Math.maxのようなメソッドコールとして知られている、プログラマーに知られた特定のコマンドの使用と密接に結びついているので、オラクルはここで争わない。

次に「実装コード」についての説明を行い、「宣言コード」との差異が明確化されます。
趣旨としては、「実装コードの方がより作るのが大変で且つ創作的なんだ」ということが言いたい感じです。

そして、それは著作権で保護されているが複製されていない実装コードと密接に結びついている。更に、複製された宣言コードと、複製されていない実装コードとは、異なる種類の機能を必要とし、若しくは反映する。単一の実装は、数十の異なるステップをコンピューターに実行させる。実装コードを作成するため、コンピューターがタスクを実行できる速度やコンピューターのメモリの予想されるサイズなどの考慮事項のバランスを取る必要があることを、証人は陪審員に証言した。ある証人は、API開発者が「バッテリーで動作する」デバイスのための「電力管理等」について検討する際、創作性は彼、彼女により「魔法」として実践されると説明した。これは、ラップトップ、デスクトップではなくスマートフォンという非常に異なる環境で使用されるアンドロイドソフトウェアを構築するために必要であった顕著な創造性である。

そして、「宣言コード」の創作性は「実装コード」のそれとは性質的に明確に異なることが説明されます。
具体的には、実際にコンピューターを適切に動作させるための革新的な機能を提供する「実装コード」に対して、「宣言コード」は、プログラマーがそのプログラミング環境を自分のスキルとして選択する動機づけを与えるためのものであることが説明されます。

宣言コード(プログラマーのメソッドコールと切り離せない)は、異なる種類の創造性を実現している。例えば、Sun Javaのクリエイターは、直感的に覚えやすい宣言コードの名前を検討した。彼らは、システムを学び、システムの開発を助け、他のシステムを使用することに消極的なプログラマー達を惹き付けたいと考えた。宣言コード・・・はユーザー向けである。それは開発者がそれを呼び出せるように、直感的で理解しやすい方法で設計され、構成されるべきである。Sunのビジネス戦略は元々プログラマーを惹きつけるためにAPI使用の重要性を強調していた。それは、APIを「オープン」にし、「その後、実装で競争する」ことを想定していた。裁判での証言は、ユーザー中心の宣言コードと革新的な実装コードの間にこの重要な線を引いた証人の例でいっぱいであった。

続いて、「宣言コード」の価値は、「実装コード」のような他のプログラムとは異なるものであることが語られます。
その価値とは多くのプログラマーがAPIのシステムを学ぶために費やした時間、Googleによって複製されなかった実装コードの使用、つまりSun Javaの普及に帰結すると説明されます。

これらの特徴は、ユーザーインターフェースの一部として、宣言コードがコンピュータープログラムの私的な実行とはある程度異なることを意味する。他のコンピュータープログラムのように、それは本質的には機能である。ただし、他の多くのプログラムとは異なり、その使用は本質的に、著作権のないアイデア(一般的なタスクの分割と編成)および新しい創造的な表現(Androidの実装コード)と結びついている。他の多くのプログラムとは異なり、その価値の大部分は、著作権を持たない人、つまりコンピュータープログラマーが、APIのシステムを学ぶために自分の時間と労力を費やしているという価値に由来している。そして、他の多くのプログラムとは異なり、その価値は、プログラマーがそのシステムを学び、使用することを奨励して、GoogleがコピーしなかったSun関連の実装プログラムを使用する(そして使用し続ける)努力にある。

最後に、保護される著作物とは著作権による保護の中心に近いものから遠いものまで様々あり、本件において複製されている「宣言コード」は、以上の説明から、著作物として保護される多くのプログラムの中でも著作権の中心から遠いものであって、「フェアユース」の適用に対して肯定的であると結論付けられます。

著作権はさまざまな種類の著作物を保護するが、一部の作品は他の作品よりも[著作権]の中心に近いことを認識する必要性を強調した。我々の見解では、今説明した理由により、宣言コードは、著作権で保護されているとしても、(実装コードのような)ほとんどのコンピュータープログラムよりも著作権の中心から遠いものである。その事実は、異議申し立てと連邦巡回控訴裁判所の両方が表明した、ここでの「フェアユース」の適用が、議会がコンピュータプログラムに提供した一般的な著作権保護を著しく損なうという恐れを軽減する。そしてそれは、「著作権で保護された作品の性質」という要素が、フェアユースを肯定することを意味する。

というわけで、ざっくりまとめると
・宣言コードとは実装コードを呼び出すためのものである。
・実装コードの作成はコンピューター(ここではモバイル)を動作させるためのものであり革新的である。
・宣言コードの著作物としての意義は、プログラマーがプログラミングをしやすいように構成されていることにあるが、それは著作物として保護されない「アイデア」にも関連している。
・以上の検討から、「宣言コード」はプログラム著作物の中でも著作権の中心からは遠いものであり、その複製はフェアユースの適用に対して肯定的に作用する。
という内容です。

というわけで、フェアユースの4つの判断要素のうち1つはフェアユースの適用に肯定的であることが示されました。
(1)使用の目的と性質
(2)著作物の性質 → 肯定
(3)著作物全体に関連して使用される部分の量と実質性
(4)著作物の潜在的な市場または価値に対する使用の影響

その2.技術的事項の説明< >その4.使用の目的と性質

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