根拠が怪しいのに主張されている「言い過ぎ知財」を晒していく(けど今回は言い過ぎてなかった)

前回は東京タワーについて書きました。
「次回」と書いたので、スカイツリーについても書いてみようと思います。
が、結論から言えば今回は言い過ぎてないと思います。

早速ですが、公開されている規約。

東京スカイツリーに関する知的財産(名称・ロゴマーク・シルエットデザイン・完成予想CG)は、東武タワースカイツリー株式会社等の著作権・商標権により保護されております。使用に関しては、東京スカイツリーのイメージ維持のため、東京スカイツリーライセンス事務局で管理しております。これら知的財産は事務局の許諾なしに使用する事はできません。商品化や広告・販促での活用など、東京スカイツリー知的財産のご使用に関するお問合せは、下記事務局までお願いいたします。
なお、商品化についてのお問合せは、一般ライセンスのみを対象とさせていただいております。OEMに関するお問合せは受け付けておりません。
また、知的財産使用およびライセンス以外の一般的なお問合せ、ならびに商品のセールス等につきましてもお答えできませんので、ご理解下さいますようお願いいたします。

東京タワーみたいに「外観的形象」と明示されていない分良心的な感じがします。
細かいですが大事な事です。
前回書いたように、建築物の外観が著作物として保護される範囲は非常に狭く、スカイツリーのような巨大建築物の著作権を侵害する事なんて、実質的には不可能なのですから。

建築物としての外観に関係する部分としては「シルエットデザイン・完成予想CG」の部分でしょうか。
ただしこれはシルエットデザインの絵柄や完成予想CGそのものについての著作権を主張しているのであって、建築物としての東京スカイツリーの外観が「著作物だ」等というバカなことを言っているのではないと思います。

うむ、東京タワーとは一味違いますな。

では、東京タワー編でも槍玉にあげた商標登録、いってみましょう。

まず、シルエットデザインの方
201701

このシルエットデザインについて6件の登録があります。

【登録番号】5111134
【登録番号】5137015
【登録番号】5210647
【登録番号】5225539
【登録番号】5252354
【登録番号】5252355

指定商品・役務のほぼ全区分に亘ってかなり広い登録がされています。
上記のシルエットデザインをマークとして色々と商売しようって事ですね。
まぁそんなもんでしょう。

これは、スカイツリーの外観をシルエット状にしたマークが商標登録されているという事であって、スカイツリーの外観形状が商標登録されているという事ではありません。

で、重要なのは立体商標登録の方。

【登録番号】  5476769
cg1 cg2

この立体商標登録があります。
立体商標になってはいますが、見た目的にも、規約上に記載されている完成予想CGがこれを指しているのではないかと思います。
では、権利の対象を見ていくとします。

【商品/役務】
第3類 家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,靴クリーム,靴墨,せっけん類,歯磨き,化粧品,香料類,つけづめ,つけまつ毛

第4類 固形潤滑剤,靴油,保革油,燃料,ろう,ランプ用灯しん,ろうそく

第8類 ピンセット,電気かみそり及び電気バリカン,手動利器,手動工具,エッグスライサー(電気式のものを除く。),かつお節削り器,角砂糖挟み,缶切,くるみ割り器,スプーン,チーズスライサー(電気式のものを除く。),ピザカッター(電気式のものを除く。),フォーク,アイロン(電気式のものを除く。),糸通し器,チャコ削り器,ひげそり用具入れ,ペディキュアセット,まつ毛カール器,マニキュアセット

第9類 写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,眼鏡,家庭用テレビゲームおもちゃ,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCDーROM,レコード,メトロノーム,電子楽器用自動演奏プログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し・及び保存することができる音楽ファイル,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,インターネットを利用して受信し・及び保存することができる画像ファイル,録画済み磁気式又は光学式の記録媒体,電子出版物

第14類 貴金属,宝石箱,記念カップ,記念たて,身飾品,宝玉及びその原石並びに宝玉の模造品,時計

第16類 紙製幼児用おしめ,紙製包装用容器,衛生手ふき,紙製タオル,紙製テーブルナプキン,紙製手ふき,紙製ハンカチ,紙類,文房具類,印刷物,写真,写真立て

第18類 かばん金具,がま口口金,蹄鉄,皮革製包装用容器,愛玩動物用被服類,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ,傘,ステッキ,つえ,つえ金具,つえの柄

第21類 ガラス製又は陶磁製の包装用容器,なべ類,コーヒー沸かし(電気式のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類,アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ,砂糖入れ,塩振り出し容器,卵立て,ナプキンホルダー,ナプキンリング,盆,ようじ入れ,ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜,大根卸し,タルト取り分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,愛玩動物用食器,愛玩動物用ブラシ,犬のおしゃぶり,観賞魚用水槽及びその附属品,小鳥かご,小鳥用水盤,花瓶,水盤,風鈴,化粧用具

第24類 布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布,織物製テーブルナプキン,ふきん,のぼり及び旗(紙製のものを除く。),織物製トイレットシートカバー,織物製いすカバー,織物製壁掛け,カーテン,テーブル掛け,どん帳,遺体覆い,経かたびら,黒白幕,紅白幕

第25類 被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴

第28類 遊園地用機械器具(業務用テレビゲーム機を除く。),人形,囲碁用具,歌がるた,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,トランプ,花札,マージャン用具,遊戯用器具,ビリヤード用具,運動用具,釣り具,昆虫採集用具

第30類 菓子及びパン,調味料,香辛料,コーヒー豆,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類

第32類 ビール,清涼飲料,果実飲料,ビール製造用ホップエキス,乳清飲料,飲料用野菜ジュース

第33類 日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒

というわけで、かなり多くの商品が指定されているのですが、東京タワーの時のような
20類 プラスチック製・木製の置物
28類 おもちゃ
は見当たりません。

つまり、スカイツリーに関して言えば、スカイツリーの模型を勝手に作って売っても商標権の侵害にはなりません。

スカイツリー関係の商標権によって守られているのは、あくまでもわざわざスカイツリーのモチーフを使う必要のない諸々の指定商品に関して「スカイツリー印」を付ける事です。

これは、民間が建設したランドマークをブランドとして収益化するという当然の施策なので何ら責められるべき事ではないと思います。

対して、ランドマークというのは「風景」「景観」としては住民、国民の共有資産とも言えるもので、例えば「ドラマの撮影に使って映り込んだら金払え」とか、そういった事は言い過ぎだよというのが著作権法46条の趣旨でしょうね。
東京タワーはその辺の趣旨を理解せずに強気に振る舞っているようですが、スカイツリーはその辺の趣旨を尊重した振る舞いが見られます。

この際だから規約上にも「スカイツリーの模型の製造販売を禁止する権利は我々にはありません」とか、「スカイツリーを撮影で使うことを禁止する権利は我々にはありません」とか書いてくれれば「あっぱれ!」なんですが。

ただ!
勝手に模型を製造販売してもいいけど、公認を取ってもないのに「公認」とか、さもスカイツリー事務局から正式にライセンスされて売ってるみたいに偽るのは駄目ですので、その辺はご注意を。

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